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四阿・東屋
【あずまや】


azumaya

【近代】古代と近代で内容的に異同がある。1)現代では棟(むね)を四方へふきおろし、屋根を正方形に、柱のみ四本で壁のない小屋風の建物。公園や和風庭園などの休憩所としてみえる。2)古代では、中国渡りの屋根の形式で四つの阿(むね)からなり、雨水が前後左右の四方向に流れ落ちる構造の屋根をもつ、いわゆる寄棟造の屋根、およびそうした屋根をもつ建築物。[中国語]亭子。arbor.

【語源解説】
〈四阿(アズマヤ)〉はア(阿)・ツ・マヤ(両下)の語構成。四つの阿(むね)を・もつ・マヤの意。〈四阿〉は古典中国語。中国古典『周礼』に〈官人四阿重屋〉などとみえる。この〈四阿〉に日本でアツマヤとあてた。したがってアは阿の中国語、ツは名詞と名詞を結ぶ助詞(天ツ乙女(をとめ)などのツと同じ)、マヤは古辞書に〈両下〉とあてる日本語。直訳すると〈阿をもつマヤ〉。〈四阿(アヅマヤ)〉は中国語と日本語との複合した言い方。〈美(ビ)のあらわれ〉などと語の構造は同じ。漢字〈阿〉は辞書では棟(むね)・軒(のき)(簷)の意とするが、字源からいくと山、岡の稜のようなところをさす。したがって、日本語としては、ムネにあてるのがもっとも近い。しかし四つの阿(ムネ)をもつことは、四つの軒(ノキ)(簷)をもち、さらに四本柱で支えることと連動する点、辞書によっては、柱(ハシラ)の意も示す。しかし根本は棟(ムネ)であろう。屋根の形としては四方に傾斜していることになる(阿は傾斜の意もふくむかもしれない)。日本語の〈棟(ムネ){むね@棟(ムネ)}〉はおそらく人の胸とも同根語、したがって棟は建物(屋根)として重要な部分で、〈棟高し〉は豪華な建物の形容。マヤは日本語で真屋をあてるのは単なる宛字。むしろ古辞書〈両下〉をあてるのが正統。これは文字どおり両方ニ下ガル垂レル、形としては二つの方向ニ傾斜があるということになる。したがって神社などにみる〈切妻造{きりづまづくり@切妻造}〉と同じ構造をさす。以上の点から、〈四阿=阿(ア)ツ両(マ)下(ヤ)〉は、下の図(A)のように、四つの棟をもち前後左右に傾斜した屋根の建造物をさす。これは別に中国で〈四注造{しちゅうづくり@四注造}〉(注はソソグの意、四方に雨の降りそそぐこと)ともよんだ。純日本風とは異なって中国渡りの形式といえる。〈四阿〉には図(B)のように文字どおり四ツの阿(ムネ)からなる形式もあって、真上からみれば正方形あるいは矩形の形をとる。後世のアズマヤは後者を主としてさす。これらを〈方(ほう)形(ぎょう)造(づくり){ほうぎょうづくり@方(ほう)形(ぎょう)造(づくり)}〉ともよぶ。いずれにせよ、四阿とアズマヤとは厳密には中国と日本でずれがあるが、大局的には四つの阿(ムネ)をもつマヤの意が語源。gyodori{hfilepsfile{file=eps/a001.eps}}%

【用例文】
○四阿 唐令ニ云フ、宮殿皆四阿 mini{和名、阿(ア)豆(ヅ)万(マ)夜(ヤ)}/両下 mini{和名、万(マ)夜(ヤ)}(和名抄)○あづまやのまやのあまりの両そそぎわれ立ちぬれぬ(催馬楽)○屋はまろ屋、あづま屋(枕)○あづまやのまやのあまりの雨そそぎあまりなるまでぬるる袖かな(藤原俊成)○四阿屋(アツマヤ)(下学集)○四阿屋(アヅマヤ) mini{四方垣無レ之}(運歩色葉集)○Azzumaya. アヅマヤ 屋根の傾斜面の四つある家/アヅマヤヅクリ(日葡辞書)○四阿屋(アヅマヤ) mini{周礼註、四阿四柱屋也。文選註、四阿、屋、四垂也}(書言字考)○四阿屋(あづまや)(早節用集)○吾妻屋(アヅマヤ)、四阿屋造(イリモヤヅクリ)又云入母屋造、四阿屋造(アヅマヤツクリ)又云宇合屋又云吾妻屋(紙上蜃気)○あづまやも有る金沢の御庭内(川柳)○四阿(あづまや)の後に聳ゆる老松の梢に十八日の月(尾崎紅葉)○「春」住む庭の四阿屋(あづまや)に風の通路(かよひぢ)ひらけたり(上田敏)
【補説】
アズマ{アズマ}(東国)を文化の低いところと考え、アヅマヤを粗末と連想するのは誤り。むしろ、アヅマヤはハイカラな様式。それがのち、東(アズマ)国と関連させて次第に粗末な家のように解された。




東京書籍
「語源海」
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