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厚岸湾
【あっけしわん】


釧路地方の厚岸湾から釧路町の太平洋に開口する湾。太平洋に面する湾としては道内では内浦湾に次ぐ規模。湾口は南東向きで幅7km,西は尻羽(しりぱ)岬,東は末広(まびろ)崎が限り,水深は29m,湾内に大黒島と小島がある。北部の湾奥までは12.4kmで,この湾には「東海岸諸港中,根室,浜中と共に著名の地なり」(北海道志)とされた厚岸港があり,古くから東蝦夷地随一の良港といわれた。湾奥東部には厚岸の市街地を挟んで厚岸湖がある。南風の時は波浪が高く,湾内には仙鳳趾(せんぽうし)礁・中瀬礁などの岩礁も数座あり,大型船の航行は湾口中央部3kmに限定される。外国船入港の記録は「松前旧事記」に「寛永二十年,東蝦夷地アツケシ江阿蘭陀船漂流」とあり,オランダ東インド会社の北方航路探険隊司令官ド・フリース指揮のカムストリカム号でこの湾をグーデー・ホープ(希望湾)と名づけた。天保15年には外国船,嘉永3年にはイギリスの捕鯨船難破の記録もある。この湾は古くからニシン・サケ・コンブ漁が盛んで,太平洋に面した半島部の漁村では多く採藻漁業(コンブ)に従事する。湾口部の大黒島はかつてオランダ船が「ファンデルリン島」と命名し,松浦武四郎の「納紗布日誌」ではホロモシリとみえる。この島の周囲は6km,長さ2km,幅0.8kmで,最高点は108m,海食崖に囲まれた段丘性の島である。「殖民状況報文釧路国」では明治31年には大黒島には2戸,北の小島には9戸の漁家があったとされるが,現在これらの島はコシジロウミツバメ・オオセグロカモメ・ケイフマリなどの海鳥繁殖地,ゼニガタアザラシの生息地としても知られる。湾岸には高さ40~120mの根室段丘が迫り,湾奥は大部分が尾幌川の低湿地のため泥炭地となっている。湾奥には国道44号と根室本線が並走し,車窓からは大黒島が望まれ,また晴天時には湾内から雄阿寒・雌阿寒岳が遠望でき,湾岸は厚岸道立自然公園の特別地域に指定されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7000319