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イタンキ浜
【いたんきはま】


室蘭市の絵鞆(えとも)半島基部南岸にある太平洋に面した砂浜海岸。松浦武四郎「初航蝦夷日誌」では「イタンケ沙浜少しの湾の形」とある。この海岸の北東端は鷲別岬で,古くはポロイタンキと呼ばれた。中間部にイタンキ岬があり,これより西はポンイタンキと呼ばれ,陸繋島をなす砂州の一部で,かつてはイタンキ沼などの低湿地が背後に広がり,幌別~室蘭間の道がこの海岸を通った。イタンキは「椀」の意とされ(北海道の地名),「東蝦夷日誌」でも「椀の如き岬有,故号く」とある。イタンキ岬は古くは鯨岬といい,沖合いには鯨岩があったという。「北海道蝦夷語地名解」には「下場所ノ土人……海中ノ鯨岩ヲ見テ真ノ寄鯨ナリト思ヒ,鯨ノ流レ寄ルヲ待ツコト数日」,その後餓死したという伝説がみえる。付近には続縄文時代・続縄文時代晩期の遺跡も多いが,本格的な定住は明治20年に輪西(わにし)屯田220戸がこの浜の背後に入植してから。昭和初期には日本製鉄(現新日本製鉄)の社宅街が建設された。現在は室蘭市の準工業団地となり,イタンキ港(第1種漁港)も建設された。昭和29年には第2次大戦中に強制労働の犠牲となった中国人の遺骨がこの浜で発掘され,室蘭鉄道の汐見トンネル付近に中国人殉難烈士慰霊碑がたつ。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7000599