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小幌洞窟
【こぼろどうくつ】


胆振(いぶり)地方豊浦町の最西端にある洞窟。内浦湾に面する。渡島(おしま)地方長万部(おしやまんべ)町との境界,美利加浜(ぴりかはま)付近に位置し,周辺は幌扶斯(ほろふす)山(413m)の山麓が安山岩質集塊岩の海食崖をなす。この海岸沿いの道路は古くから蝦夷地の三大難所の1つとされ,寛政11年には礼文華(れぶんげ)道路が開削された。この洞窟は「北海道蝦夷語地名解」には「ケウポール(屍洞)一大洞穴アリ僧円空鉈作リ観音像一体ヲ安置ス。古ヘ死人ノ屍洞中ニアル故名ヅクト云フ」と記される。洞窟は奥行15m,最大幅16m,間口の高さ3mで面積は240m(^2)。洞内には擦文時代の貝塚や遺物があり,7体の人骨も発見されたが,完全骨格ではなく,移設されたとみられる。この洞窟は寛文6年の円空作とされる仏像があることでも知られ,「北夷談」には「アブタ領の内レブンゲ(地名)と云所有。此有一里半程海岸岩崎にケホヱ(地名)と云ふ所に岩穴有。口さし渡し弐間余。此穴に入て見る処仏の木像にて四体有」とあり,寛政3年の「えぞのてぶり」や松浦武四郎の「東蝦夷日誌」などにも記される。「北夷談」では仏像の背に「うすおく乃いん」「たろまゑのたけ」などの地名が記されていたことから,それぞれの地へ送り,安置したとある。付近が岩屋と呼ばれたことから岩屋観音とも称した。またこの観音は首がなく,首なし観音と呼ばれていたが,アブタ場所請負人の泉屋藤兵衛により修復されたという。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7003107