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層雲峡
【そううんきょう】


上川地方上川町にある峡谷。大雪山国立公園のうち。石狩川上流に位置し,東端は大函(おおばこ),西端は安足間(あんたろま)川に達する延長24km。道内の主要観光地の1つで,大雪山・ニセイカウシュツペ山間にあり,火山岩の渓谷としてはわが国第一。古くはアイヌ語で単にニセイ(絶壁,峡谷)と呼ばれたが,その後双雲別または霊山碧水峡ともいわれ,大正10年に大町桂月が層雲峡と命名(上川町史)。約3万年前に新大雪火山の火砕流が粘板岩を基盤として広く堆積し,石狩川の浸食により溶結凝灰岩の柱状節理をもつ峡谷が出現した。上流部の大函・小函は両側から谷壁が迫り,高さ160mの神削(しんさく)壁などを落下する流星ノ滝(旧称雌滝)や銀河ノ滝(雄滝)・雲井ノ滝などが圧巻で,秋には河畔林の広葉樹が渓谷美に彩りをそえる。層雲峡の探険は安政4年に石狩在勤足軽松田市太郎による石狩川水源探査が和人による最初のものとされ,松浦武四郎も「石狩日誌」ではサンゲソマナイ以降の記述の中で「川岸は両岸絶壁のみにして上り難しと。山また是より愈嶮悪にして」と記す。明治5年の開拓使掌高畑利宜の踏査記にも「両岸ハ誠ニ直立タル巌石ニシテ其ノ高サ殆ト五,六丈アリ」とみえる。明治7年にB.S.ライマンが「秋山温泉」と命名した層雲峡温泉は単純硫化水素泉で,双雲別温泉,または大正3年の温泉旅館開設者にちなみ塩谷温泉とも呼ばれた。昭和3年にはこの温泉に陸軍療養所が開設され,戦後は黒岳ロープウエーも設置され,峡谷の探勝基地大雪山系への登山口になっている。道路は大正9年に双雲別まで開削,同12年に層雲峡駅逓が設置され,昭和2年には大函まで達した。その後層雲峡発電所が建設され,昭和30年代から国有林内の風倒木処理が進み,林道開設に伴い道路の整備が進展した。昭和32年には道東を結ぶ主要幹線の国道39号(大雪国道)が開通,また国道273号を介して十勝地方とも結ばれる。また昭和50年には大函ダム上流に多目的のロックフィルダム,大雪ダムが建設され貯水池の大雪湖が完成。昭和9年に大雪山国立公園に指定され,峡谷全体が自然公園特別地域となり,流星ノ滝から上流部は特別保護地域に指定されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7004573