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戸蔦別岳
【とったべつだけ】


日高地方平取(びらとり)町・新冠(にいかつぷ)町と帯広市との境界にある山。標高1,959m。日高山脈襟裳国定公園の特別保護地区(昭和56年指定)。日高山脈主稜中央部に位置する。山脈中,南の最高峰幌尻岳(2,052.4m)・カムイエクウチカウシ山(1,979.4m)に次ぐ高峰。満壮年期の山脈の中心部にあり,山頂部は三角錐状で,3本の鋭い稜線をもつ。山体は日高中軸帯と呼ばれる火成岩・変成岩域にあり,頂上付近は西側で橄欖岩,東側は片麻岩類が露出する。南東・北東の斜面にはカール(圏谷)があり,南東のものは七ツ沼カールと呼ばれ,底に大小の池沼がある。これらのカールは,幌尻岳東西両翼斜面のカールとともに氷河期の氷食地形とされる。氷河の存在した時期は2期に分かれ,ヨーロッパのウルム氷期・ウルム亜氷期に相当し,幌尻岳のカールより新しく,昭和29年トッタベツ氷期と命名された。氷河の存在時期については,近年,議論もある。北東のカールから戸蔦別川が発し,松浦武四郎の「東蝦夷日誌」でも,この水源を「トッタベツ岳」と記す。昭和20年代後半から登山者が増えたが,夏山でも熟練と十分な装備を要する。頂上付近の風衝砂礫上のユキバヒダコイ群落,カール斜面の日高固有種カムイビランジ,山脈中で最多種を誇るカール底のお花畑など,貴重な高山植物がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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