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東蝦夷地
【ひがしえぞち】


近世の,蝦夷地東部の地域称の1つ。西蝦夷地に対して用いた。蝦夷地は,松前を基点に東西に分かれ,東蝦夷地は下蝦夷地・東地・東部・下地などともいった。和人地との関係があるが,おおむね,ヤムクシナイ場所から先の,噴火湾岸・太平洋岸の諸場所を経てシレトコ岬に至る。元禄13年「松前島郷帳」では「従松前東在郷并蝦夷地」として,和人地のほか「はらき」より「つうへち」まで61か所の地名を挙げている。のちの東蝦夷地の範囲と異なり,シレトコを越えてオホーツク海沿岸地方まで「東在郷并蝦夷地」の領域としていた。「元禄国絵図」には「従松前東」の蝦夷地として「しりきし内」から「しろい所」まで51か所の地名(ほかにクルミセ島,石狩川口からあづま間など)をあげているが,東西蝦夷地の境を「しろい所」としている訳ではなく,この図には境界を示す表現はない。「津軽一統志」は「松前より下狄地所付」として「泊川」から「あっけし」まで和人地を含め117か所,「蝦夷志」は「在東者」として「ハラキ」から「ツコロ」まで54か所の地名を記す。「津軽一統志」は,東地の奥は「シレトコ」を越えて「トコロ」「ユウベツ」などオホーツク海沿岸の地名まで書き上げており,注目される。文化年間に東蝦夷地に設けられていた場所は「東夷窃々話」によれば,ヤムクシナイ・アブタ・ウス・エトモ・ホロベツ・ユウフツ・サル・ニイカツプ・シツナイ・ミツイシ・ウラカワ・シヤマニ・ホロイツミ・トカチ・クスリ・アツケシ・ネモロ・クナシリ・エトロフの19か所。後に,2~3の増減がある。寛政11年に幕府の直轄地となり松前奉行所の支配下に入るが,文政4年松前氏に還付され,安政2年再び上知されて明治維新を迎える。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7007005