100辞書・辞典一括検索

JLogos

10

椿山
【つばきやま】


東津軽郡平内(ひらない)町にある名勝。浅虫夏泊県立自然公園内にあり,夏泊半島の北端に近い茅岳の東麓に位置する。海岸部から山腹斜面一帯の約22haに大小7,000本のヤブツバキが群生し,初夏には全山が椿の赤い花に覆われる。大正11年10月,ツバキ自生北限地帯として国天然記念物に指定された。寛政7年ここを訪れた菅江真澄は「津軽の奥」の中で,「海もなぎ空もはれたれば,つとめて椿崎見にとて出ゆく(中略)今,やよひの末つ方花はなかばかりも咲つれど,紅ふかうふゝみたるは稀なるやうに,朝日の影にいとまばゆきまで,にほひの潮と共に満々たり(中略)こゝらの椿咲きたるは,巨勢の春野のたま椿も,之こそをよばねと」とその美しさをたたえている。また付近には椿神社があり,真澄はそこにまつわる伝説として,土地の女と上方船頭の悲恋物語を紹介し,「影おつる磯山椿紅に染めて汐潮の波の色こき」と詠んだ。また弘化元年この地を訪れた松浦武四郎は「東奥沿海日誌」の中に「此山一山椿斗にして中に松二三株立り。池木辺ハ一本もなし。余が通りしハ三月二十一日成しが,花も少し咲ける故に山陰なる雪に移りて一しほ景色おもしろかりし也」と記している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7011829