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新井田川
【にいだがわ】


岩手県北部の平庭峠(842m)付近に源を発し,北部北上山地北半部を縦断して北流し,本県南東部をほぼ北流する川。新井田川水系の幹川。2級河川。流路延長81.8km・流域面積585.4km(^2)。県内域では三戸郡南郷村から八戸市を流れ,同市東部で太平洋に注ぐ。流域は主に,先第三系の古期岩層からなるため,いくつかの盆地を除いては谷は狭長で,特に中流部で谷壁が険しい。上流は岩手県内で,西側を流れる本流の瀬月内川と東側の雪谷川の2つに分かれる。瀬月内川は岩手県の二戸市と九戸郡の境界である折爪岳山塊の東斜面の水を集め,伊保内(いぼない)・江刺家(えさしか)の細長い盆地で緩やかに蛇行する。雪谷川も,円子・小軽米(こがるまい)・軽米の小盆地を緩やかに蛇行し,県境に近い岩手県軽米町大鳥で合流して新井田川となる。合流点のやや上流から南郷村島守の盆地までの間の約13kmは,険しい谷壁をもつ穿入蛇行で,途中の南郷村世増(よまさり)にはこの地形を利用する国営八戸平原開発計画による世増ダムが計画されている。島守から八戸市是川までの6.5kmも穿入蛇行で,かつて鷹の巣渓流と呼ばれ,風光の地として知られていたが,最近は全域が岩肌むき出しの採石場となり,その面影はない。是川を過ぎて東側から松館川が合流し,最下流部は八戸市中央部の類家(るいけ)低地帯を緩やかに流れて太平洋(八戸湾湾)に注ぐ。昭和31年までは河口で馬淵(まべち)川と合流していたが,同年,洪水防止・第一工業港造成・新工業用地造成などのため,馬淵川に新放水路が掘削されて以後は,単独で太平洋に注ぐようになった。河口近くには湊川と呼ばれ,江戸期以前から河口港として利用されてきた。上流のいくつかの盆地と最下流の類家低地帯を含めても平地の割合は小さく,水田はそれほど広くなく,農業用水としての利用率はあまり高くない。流域の主な産業は畑作を主とした農業(野菜・煙草など)・林業・畜産業などである。水産加工や採石などの汚水による公害で,一時消滅するかにみえたサケの漁獲量も関係者の努力によって,乏しいながら増加しつつある。河口からの数百mは,八戸漁港の一部として利用され,中小型漁船のマストが林立する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7012196