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八甲田山
【はっこうださん】


青森市東南方にある山塊。上北郡十和田湖町北部にまたがる。八甲田火山のカルデラに生じた中央火口丘群で,標高1,585.6mの八甲田大岳(大岳)を主峰とし,前岳・田茂萢(たもやち)岳・赤倉岳・井戸岳・石倉岳・高田大岳・雛岳の8峰をさすが,ほかに小岳・硫黄岳を合わせて10峰で構成される(青森営林局青森林友会:十和田・八甲田)。那須火山帯に属し,高原の八幡平,湖水の十和田湖,渓流の奥入瀬(おいらせ)とともに,男性的な山岳美を誇る十和田八幡平国立公園の北端に位置する。新生代第四紀洪積世の火山である。8つの峰と低地に発達する高層湿原,池塘を田と見なして八甲田と呼称するといわれる。種々の火山形態と活動様式,河谷湿原から山岳に至る植生の変化など地質・地形・植物の研究には不可欠のフィールドである。標高800~900mはブナ・ミズナラ林で構成されるブナ帯となっており,900~1,100mではアオモリトドマツ(オオシラビソ)・ブナ・ダケカンバの生育する針濶混交林,1,100~1,450mではアオモリトドマツにチシマザサを混生する針葉樹林帯で占められる亜高山帯となる。この上部は高山帯となり,下方はハイマツ・ミヤマハンノキ,矮小化したダケカンバの見られるハイマツ帯,上方はガンコウラン・イワウメ・コケモモなどの生育する草本帯となっている。山腹には昭和4年創立された東北大学理学部付属八甲田山植物実験所があり,学生の野外実習のほか,国内外の学者・研究者が訪れて植物研究が行われている。また,ここには八甲田山に生育する植物を短時間で観察できる植物園も併設されている。当山塊周囲には国民宿舎酸ケ湯(すかゆ)温泉をはじめ,八甲田温泉,谷地温泉などがあり湯治客でにぎわう。主峰八甲田大岳への登頂は酸ケ湯温泉から仙人岱を経由して行われるが,毛無岱(けなしたい)コースも整備されている。さらに,昭和43年に敷設された八甲田ロープウエーを利用して北方の田茂萢岳・赤倉岳を縦走して八甲田大岳に至るコースもある。北方には広大な高原田代平(たしろたい)があり,この東端馬立場山頂には明治35年,歩兵第5連隊八甲田山雪中行軍遭難を記念した後藤伍長の銅像がたつ。北西方には菅野高原,西南方には荒川の開析した城ケ倉渓谷がある。青森市街から十和田湖へ至る十和田北線が走り,国鉄バスが定期運行される。八甲田山というと通常これまで述べた山塊をさすが,この山塊と荒川を隔てて南西部に位置する連峰を南八甲田と呼び,八甲田山を北八甲田と呼ぶことがある。冬季には南北両八甲田は,10mを超える雪で覆われることと適度なスロープが形成されることからツアースキーのコースが設けられる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7012422