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奥羽山脈
【おううさんみゃく】


東北地方の中央を北上山地・出羽丘陵と並行するわが国最長の脊梁山脈。全長約500km,別に奥羽分水嶺山脈とも呼び,太平洋型気候と日本海型気候の境界山脈。古生界の結晶片岩,石灰岩,花崗岩類を基盤とし,新生代・新第三紀中新世以降のグリーンタフ造山運動によって形成。その後,鮮新世~第四紀と活発な火山活動を継続し,多量の火山灰・軽石などを噴出降下させた。那須火山帯が重複し,カルデラと円錐形の火山,大規模な火山泥流地形が発達する。褶曲山脈を構成する岩相は,主に緑色凝灰岩・凝灰質角礫岩・頁岩・砂岩・泥岩・シルト岩・石英安山岩・流紋岩質凝灰岩などからなり,一部に薄い炭層がある。山脈南端は,福島・栃木両県境の帝釈山脈,山王峠から宮城・山形,岩手・秋田県の県境を北上し青森県夏泊半島に至る。1,000~1,400m内外の非火山性山地と1,500~2,000m内外の火山性山地に区別され,前例は真昼岳(1,060m)・和賀岳(1,440m),後例には栗駒山(1,628m)・焼石岳(1,548m)・駒ケ岳(1,637m)・岩手山(2,041m)・七時雨山(1,060m)・八幡平(1,614m)がある。東西には北上低地帯(北上盆地)・横手盆地が位置し,山脈中央に湯田沢内盆地,雫石(しずくいし)盆地の小盆地群が並列する。山脈の東斜面は,北上川・馬淵川の支流水系,西斜面は雄物川・米代川両水系によって浸食される。東西斜面とも活断層地形が発達し,後期更新世~完新世にかけての活発な地盤隆起を反映した5面群15段以上の段丘群・扇状地群が発達し,生活の中心舞台となっている。山脈は,高さの割に東西幅が25~30kmと狭く,古くから東西交流の障害となってきた歴史がある。しかし,東北新幹線の開通とともに,国鉄の北上線・田沢湖線・花輪線のスピードアップ,国道の46号・107号・282号・342号各線の拡張改修工事等の整備,特に,昭和51年仙岩トンネルの開通など,冬季間の道路不通は解消されつつある。同時に,金田一・繋・網張・湯本・湯川・花巻・夏油・須川などの豊富多様な温泉群,温泉と結合させたスキー場,葛根田・松尾両地熱発電所,北上川水系の御所ダムなどダム群の完成と,地域経済事情が急速に変化しつつある。また,浮島を含む栗駒・焼石・八幡平の高層湿原,泥炭地帯,縮小また閉山となってはいるが,湯田・松尾の両黒鉱鉱山,和賀仙人鉱山の硫化鉱は,十和田八幡平国立公園・栗駒国定公園の自然とともに守られるべき大切な資源である。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7013823