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三陸
【さんりく】


(近代)宮城・岩手・青森の3県にまたがる太平洋岸地域の広域的な通称名。通常は青森県八戸市鮫角(さめかく)から宮城県牡鹿(おしか)半島にかけてのリアス式海岸部分に用いる。三陸の名称は,明治元年陸奥国が陸前国(宮城県)・陸中国(岩手県)・陸奥国(青森県)の3か国に分かれたことから,「三」と「陸」とを合成した造語である。行政上の大部分は岩手県に属し,三陸地方・三陸海岸・三陸沿岸・三陸沖・三陸漁場・三陸もの(物)など,海にかかわる呼称が多い。三陸海岸は陸中海岸国立公園というように陸中海岸とも呼ばれることがあるが,陸中海岸とは陸中国の海岸地方の汎称で,三陸海岸の一部をなし,普通には三陸海岸で通る。陸中海岸国立公園は,日本の代表的海食景観で,昭和30年国立公園指定後,同39・46年に追加拡張され,現在は岩手県久慈市から宮城県気仙沼市に至る約180kmに及ぶから,陸中海岸というよりむしろ三陸海岸の広域地名がふさわしい。三陸地方とは北上山地が弓なりに太平洋に突出している三陸海岸とその後背地域を含めての地方名称である。三陸沿岸・三陸沖・三陸漁場は,寒暖2流のまじわる世界有数の漁場で,八戸・久慈・宮古・釜石・大船渡・気仙沼など近代的設備・施設のある漁港が並び,全国屈指の水揚高を誇る。また,沿岸では浅海養殖が盛んで,この三陸漁場からの魚貝藻は三陸物として評価があり,江戸期も長崎俵物として名をなした。海の宝庫である三陸沖はまた地震の多発地で,これにより発生する津波被害は,三陸沿岸の経済・文化を海の底にさらっていくが,この津波は「ほぼ四十年に一度来襲」(岩手県の歴史)とか35年周期説などといわれ,日本一はおろか世界一の津波常襲海岸である(三陸大津波)。三陸地方を縦貫する道路は国道45号で,仙台―陸前高田―釜石―宮古―八戸―青森と結び,海岸沿いはおおむね江戸期の浜街道に沿う。これと並行に走るのが三陸鉄道で,日本初の第三セクター方式(民営)として昭和59年4月1日沿岸住民熱望のうち開業。宮古~久慈間(71km)は北リアス線,釜石~盛(さかり)間(36.5km)は南リアス線のニックネームで,沿岸唯一の足として観光・経済に果たす役割は大きい(宮古~釜石間は国鉄山田線が運行している)。三陸海岸南東部,南リアス線沿線の三陸町は,昭和31年綾里(りようり)・越喜来(おきらい)・吉浜の3か村が合併して成立した町で,三陸という地名を町名に使用している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7014774