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種山高原
【たねやまこうげん】


北上山地の南西部,江刺市・遠野市・気仙郡・東磐井郡・上閉伊(かみへい)郡の2市3郡にまたがる高原。北上山地脊梁部に当たり,物見山(870.6m)を頂点とした標高600~870mの隆起準平原からなり,緩傾斜の丘陵地を形成している。南北20km,東西11kmに及ぶ草原で,古くから付近住民の放牧地として利用されてきた。江戸期に伊達公直営の放牧地の一部であったとの説もある。明治34年軍馬補充部六原支部種山出張所となり,付近の世田米(住田町の旧町)町有地と小友村(遠野市の旧村)村有地を加え,夏季放牧地(4,700ha)として使用される。大正14年六原支部の廃止後,一部世田米町に移譲され町営放牧地となるが,他は国有地として管理。昭和15年国有林内放牧適地調査をもとに開放された町営牧野と元軍馬補充部用地の一部を用地として世田米国営牧野が設置される。昭和22年種山国営牧野と改名,同24年6月に廃止され,同年7月県営種山牧野となり,同31年岩手県種山牧野と改名され,現在に至る。昭和28年の総面積は国有地の一部を加え600ha。その後,放牧利用模範施設(昭和33年から4年計画)・高度集約牧野(昭和35年放牧開始)・大規模肉牛生産施設(昭和42~45年)・畜産研修事業(昭和51年開始)・和牛産肉検定事業(昭和53年開始)・公共育牧場整備業(昭和54~56年)など施設と機能の拡充が行われてきた。現在の主な業務は,家畜の寄託放牧(乳牛・肉牛・乗用馬・競走馬を5月中旬~10月中旬の150日間預って放牧)・畜産研修(短期研修生を全寮制で教育)・和牛産肉能力(間接法)検定など。牧野一帯にレンゲツツジの群生がみられ,6月中旬頃は牧草の中に緑と赤のコントラストをつくる。詩人宮沢賢治は,当地をたびたび訪れ,「種山ケ原の雲の中で刈った草はどこさがおいだが忘れだ雨ふる」と愛着をこめてうたっている。物見山と立石(730m)付近は眺望にすぐれ,北に岩手山・早池峰山,西に奥羽山脈と北山盆地,東に五葉山,南に室根山などが望める。中腹に昭和49年種山高原青少年自然の家が開設され,青少年の育成を図るとともに,健康的な観光地として注目されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7015268