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吾妻連峰
【あづまれんぽう】


那須火山帯に属し,山形・福島県の県境をなす連峰。山名については,日本武尊が碓氷(うすい)峠(長野県)から東方を望み,吾が妻をしのんだことから東国を吾妻といい,東国の山を吾妻山と称したという伝承がある。また福島から見た家形山・一切経山が柱4本を立てた四阿(東屋)に似ていることから,東屋岳・吾妻山と称したともいわれるが定かではない。東西約20km・南北約15kmに及ぶ広大な火山群で,西吾妻火山群と東吾妻火山群に大別される。前者は,連峰最高峰西吾妻山(2,024m)をはじめ,西大巓(にしだいてん)(1,982m)・東大巓(1,928m)・中吾妻山(1,931m)などからなる古い火山群。2,000m前後の山頂までアオモリトドマツ・コメツガ・ヒメコマツなどの亜寒帯林に覆われている。これはほかの火山には見られない特色で,西吾妻山・中吾妻山を中心として見事である。また,西大巓から東大巓の稜線約6kmは,広大な湿原と多数の池塘が存在し,特異な自然美を呈している。後者は,一切経山(1,949m)・東吾妻山(1,975m)・吾妻小富士(1,705m)・高倉山・家形山などからなる。火山活動期は新しく,裸地・噴気孔を有する。桶沼・五色沼は火口湖,鎌沼は火口原湖として知られている。火山活動の記録としては,明治26年の燕沢爆発をはじめとして,昭和25年の小爆発まで数十回記録されている。山麓には白布・五色・姥湯・吾妻などの温泉が点在している。浄土平・谷地平などの火山地形や中津川渓谷のすぐれた自然景観をもち,磐梯朝日(ばんだいあさひ)国立公園の指定を受けている。登山が可能となった時代は不明であるが,中吾妻山の吾妻権現,西吾妻山近くの天狗岩の吾妻神社・賀籠山稲荷,谷地平にあったといわれる白鳳寺などから推測すると,かなり古くから信仰登山があったものと思われる。なかでも吾妻権現への参道は最も古くから開発され,高湯温泉から五色沼(雷沼)への雨乞い登山が古くから行われていたことが知られている。一方,連峰におけるスキーの歴史は古く,五色スキー場は明治44年に開かれたもので,日本の草分け的な存在である。近年北向きの大スロープを持つ天元台吾妻国際スキー場が著名になっている。また樹氷でも知られ,標高1,600m前後から出現し,かなり広範囲にわたって見られる。形態は西吾妻山山麓の舞茸状樹氷,東の栂森(つがもり)山の歯ブラシ状などが知られている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7023549