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仙人沢
【せんにんざわ】


出羽三山の1つ湯殿山の修験道の行場。湯殿山信仰の主体で,東田川郡朝日村東部,湯殿山北麓から流れ下る梵字(ぼんじ)川の上流に位置する。湯殿権現は梵字川の源頭に近く祀られ,霊湯の湧く黄褐色の巨岩を御神体とし,一帯が湯殿山の霊域となっている。一切の人工を禁じたため堂宇はなく,厳しい戒律のもとに参詣された。湯殿山神社から1km余下流,大きな礫のある沢のほとり,周囲をブナ林に囲まれて仙人沢祈祷所がある。六十里越街道の旧道が通り,注連寺(七五三掛(しめかけ)口)・大日坊(大網口)・本道寺(本道寺口)・大日寺(大井沢口)の真言四か寺の一世行人が修行した。一世行人は一代で即身成仏を遂げようとし,祈祷・医療・社会事業に活躍し多くの行人寺を建立した。行者は仙人沢で垢離をとり,木食行をして毎日3度湯殿宝前へ参詣し1,000~5,000日の行を積んだ。木食行は五穀断ち・十穀断ちのことで,この修行を積んで強い信仰心から即身仏となった行人もいる。仙人沢祈祷所を中心に40基余の行人碑があり,また洞窟や土壇・碑などが多く残っている。現在湯殿山有料道路が国道112号から湯殿山神社の近くまで3kmにわたって開かれ,かつての霊場の趣は少なくなった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7025910