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鳥海山
【ちょうかいさん】


鳥海火山帯の主峰。山形・秋田県境に位置する火山で,輝石安山岩・カンラン石と砕屑物からなる。山容は端麗で,古くから出羽富士・秋田富士の名で親しまれてきた。最高点の新山(2,237m)を中央火口丘として,七高山・行者岳・伏拝岳などの外輪山からなる新しい東鳥海火山と,火口湖鳥ノ海・中央火口丘の鍋森を中心とし,笙ケ岳・月山森・扇子森を外輪山とする古い西鳥海火山,および山腹に付随する寄生火山からなる複成火山である。有史以来の度重なる噴火活動は人々の畏怖の的となり,山そのものが信仰の対象となって遙拝登山・登拝登山といった山岳宗教の発達をみた。火山活動中,敏達天皇7年の噴火は,阿蘇山噴火に次ぐ古い記録として知られ,以後文政4年までに10数回の記録が残っている。最高峰の新山は享和元年の大噴火で形成されたものである。昭和49年には,文政4年以来153年ぶりの噴火で話題を集めた。山頂には大物忌神社が祀られ,山麓の蕨岡・吹浦(ふくら)(飽海(あくみ)郡遊佐(ゆざ)町)には口之宮があり,往時の隆盛ぶりを知ることができる。江戸期に山頂の帰属をめぐって庄内藩と矢島藩との間で大論争が行われた。宝永元年幕府の裁定によって今日の決定をみたが,山頂より4km北の飯ケ森から西に向かい,稲倉岳の北方を通るという,自然地形によらない境界の例として珍しいものとなっている。燧ケ岳(2,346m)に次ぐ東北第2の高峰,日本海からそびえる美しい山姿,日本海への影鳥海,千蛇谷をはじめとする雪渓や渓谷美,チョウカイフスマ・イワブクロに代表される120種に及ぶ高山植物,山麓の景勝地に恵まれ,昭和38年鳥海国定公園の指定を受けた。吹浦と象潟(きさかた)(秋田県由利郡)を結ぶ鳥海ブルーラインの完成で,一段とにぎわいを呈している。本県出身の歌人斎藤茂吉の歌に「あかあかと鳥海山の火を吹きし享和元年われはおもほゆ」がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7026205