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八乙女洞窟
【やおとめどうくつ】


鶴岡市大字由良(ゆら)にある海食洞。由良集落の南西2kmに位置する。古くから神秘的な存在とされた。昭和40年の調査によれば,大小2つの洞穴があり,小さいものはガス発生のため調査不可能であった。大きい方は入口の幅8m,深さ3.4mで,中に進むと幅が3.5mと狭くなるが,深さは7mと増す。水底は礫と砂で,奥の方は3つに分かれており,かなり奥まで小船で入ることが可能。岩質は輝石安山岩で,多くの割れ目や断層があり,断層の走行は北西に40°~50°で,洞窟の方向と一致していた。この洞窟には次のような伝説が知られている。崇峻天皇の皇子蜂子皇子が蘇我氏の横暴から逃れ,若狭の浦から船出して北に向かったが,難航幾十日して由良沖にさしかかると陸から妙なる楽の音が聞え舞う8人の乙女の姿が見えた。皇子は大喜びして船をつけ,疲れも加わり眠りについた。夢の中に白髪の老人が現れ「皇子よ汝の御座所は此処ではない。吾れ三足の烏をして案内せしめよう」と言い姿は消えた。目を覚ますと三本足の烏がいて,三度鳴き,やがて飛び立った。皇子は8人の乙女に別れを告げ,烏のあとを追い,落ち着いた所が,羽黒山であるという。八乙女の名称はこの伝説にちなむと伝えられ,この洞窟と羽黒山とは深い結び着きを持つとされる。羽黒山大火のおりに洞窟から煙が出たともいわれる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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