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厚樫山
【あつかしやま】


伊達郡国見町大字大木戸に位置する標高289.4mの丘陵状の山地。背後の雨塚山山塊との間には鞍部と切り込んだ谷とがあり,分離される形を示す。このためこの丘陵は断層線に沿って生じるケルンバット,ケルンコル地形であると説明される。福島盆地の北端にあり,この山からの眺望は非常によく,福島盆地全体を大観できる。このため別名を国見山と呼ばれ,かつ,換線以前の陸羽街道(国道4号)がこの東麓の丘陵を越えたので,そこを国見峠と称した。現在の国道4号もこの近くを通るが,明治9・14年の明治天皇東北御巡幸の頃は国見峠を越えて,国見町大字貝田に至り,さらに現在の宮城・福島県境をなす下紐(したひも)の関と呼ばれる標高約200mの狭隘部に至ったようである(桑折町郷土誌)。この山から現在の宮城県境に至る一連の山地は陸羽街道沿いとしては険路であり,軍事上の要害の地であった。史実によれば文治5年,源頼朝が奥州藤原氏を征討した際の決戦場であったという。今でも当時の名残として二重濠が見られる。このほか弘法大師が経巻を納めたという伝説もあり,この山に経塚山や経岡などの地名もあり,さらに行者仏源が樹塔したという三十三観音・八十八大師画像碑などがある。現在は頂上に展望台があり,山麓を国道4号・東北自動車道・国鉄東北本線と主な幹線交通路が並行して走り,交通上の要地であることをうかがわせる。地元では地形が円味を帯びているので「まる山」と呼んだり,またこの地方で農作物を背負って運ぶ農具タンガラを伏せたような形をしていることから「タンガラ山」の呼び名もある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7028710