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宇津峰
【うつみね】


須賀川市大字塩田字雲水峰・郡山市田村町谷田川に所在。南北朝期の城跡で,国史跡。阿武隈(あぶくま)川東岸にそびえる阿武隈山系の独立峰。富士山形の整った山で,山頂から県南地方一帯が見渡せる要地である。興国元年から正平8年まで南朝方の陸奥介鎮守府将軍北畠顕信が居城したとされている。昭和48年麓の宮田地区にゴルフ場が造成された際,大政屋敷遺跡・宮田陣場遺跡が調査され,中世の建物跡が検出された。宇津峰城は本城と麓に築かれた出城から成る山城で,東西約6km・南北約7kmにおよぶと考えられる。本城は標高676.9mの山頂部にあり,土塁をめぐらした千人溜を中心として,星ケ城・長平城が尾根沿いに構築されている。長平城は根小屋とも呼ばれており,籠城の時に将兵の駐屯地となった城であろう。三方ともに急崖に切り落とされた切岸をもち,その上部に3~4段の削平地を築いている。この遺構は狸山(まみやま)まで続くと思われる。これらに付属する郭は弓射峠・東乙森・西乙森,それに全軍に信号を送った鐘撞堂がある。これは本城の北西に延びた尾根の突端に構築され,昼は狼煙(のろし)を,夜は鐘をついて号令したとされている。出城は10か所を数えると思われるが記録等に表れたものは,矢柄城・三代田城・柴塚城などである。また南朝方の武器が生産された牡丹平製鉄遺跡は南の麓にあり,急な谷の斜面に幅2m×10mに及ぶ大型溶鉱炉跡が数基あり,鏃が発見されている。本城の千人溜には雲水峰神社がまつられ,郡山・須賀川市民のレクリエーション登山コースとして親しまれている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7029263