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羽山横穴
【はやまよこあな】


原町市中太田字天狗田に所在。古墳後期の装飾横穴。国史跡。市の中央部を占める洪積台地と,南部に展開する太田川流域の沖積低地との境域には,標高50m内外の低丘陵が東に走って大平洋岸に迫っている。その低丘陵の南側斜面に西から前田・後田・羽山・道内迫など横穴群が形成されている。昭和48年4月末,羽山丘陵の宅地造成工事中にブルドーザーが地下施設の天井に突き当たり,岩盤に大穴をあけた。工事関係者は穴から梯子をおろして地下施設に入り,人物・馬などが赤彩されている岩壁を発見。同年11月9~23日,原町市教育委員会が主体となり,調査を行い堆積土除法により,前庭部・羨門部・玄門部などが露呈した。前庭部は全長約3m,右手に河原石で閉塞された小龕がある。羨門部は入り口床面幅135cm・全長190cm,玄門は入り口幅79cm・高さ101cm・奥行55cm。玄門の下半部は板石などで閉塞されていたが,上半部施設は破砕された形跡があった。玄室の平面形は方形,規模は奥行幅279cm・左壁295cm・右壁285cm・前壁263cmで,周壁に沿ってコの字形に高さ約5cmの無縁台床がある。天井は扁平球状のドーム型で高さ180cmあり,四隅に稜線を描き,家型の名残をとどめている。左側台床に長さ1.9m・幅60cmにわたり玉石514個が敷かれてある。幅2.8m,床面から軒回り線までの高さ約90cmの正面奥壁には,酸化鉄赤彩の人物4・馬4・蛇行文1・長方形シルエット1,粘土顔料白彩の上に赤色班点を加えた白鹿1,赤白のテープで連結した渦巻文2,剥落した赤彩の鹿1,図文の下の赤彩水平線などが描かれている。「白鹿」の前後脚をとばして疾走する写実的描写はすばらしい。並列する渦巻文は左(径28~26cm)・右(径30~30.5cm)とも五重巻き,両図文の間を結ぶ並行線は上と下の線が赤彩,中間の三線が白彩,さらに左渦巻文には十字形,右渦巻文にはX字形赤線を入れて結束を強めている。地域的に近接する清戸迫横穴(双葉郡双葉町新山字清戸迫)と羽山横穴は,構造も相似し,壁画の図文にも人物・馬・渦巻文などの素材が描かれるなど,共通性があげられる。玄室左壁軒廻り線の上に,上下2列に並ぶ赤白の珠文25~26個,右壁にも珠文の痕跡がある。さらに,天井全面に満天の星座のごとく300個以上の珠文が描かれている。出土遺物には,鉄製直刀1(現存長さ65cm)・金銅装大刀片1(現存長さ12.5cm)・青銅製釧(くしろ)2(各外径5.4cm)・ガラス小玉107個・轡・辻金具・鉸具などの馬装具若干などがある。時代は横穴の構造,副葬品の馬具,図文の構成などから,6世紀末~7世紀前半と想定される。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7033439