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男体山
【なんたいさん】


久慈山地西列山地の男体山地の主峰をなす山。標高653.9m,一等三角点がある。南台山・鼻欠(はなかけ)山ともいう。山体は第三紀の火山噴出物である男体山火山角礫岩の集塊岩層からなり,北側から東側は傾斜は緩やかであるが,西側・南側は急崖をなす。稜線に沿って水府村と大子(だいご)町の境界線が走る。久慈川と山田川との分水界をなす。西麓の滝倉の凝灰質砂岩(滝倉層)からは巻貝や二枚貝の貝化石がよく発見される。山頂には大きな石があり,これを男体権現と称したが,現在は祠がある。男体山は地形が険しく,古くは女人禁制の山であった。西部には長福山,北部には白木山・生瀬富士が連なり,下野(しもつけ)国や大子地方に鹿島灘沿岸の魚を輸送したり,山田川の浸食谷に沿う天下野(けがの)街道との交通は,北部の月居(つきおれ)峠を経て行われた。山頂からは周囲を山に囲まれた安寺・持方の集落が北東部から東部の山腹斜面にみられる。男体山登山コースとしては国鉄水郡線西金(さいがね)駅から湯沢温泉を経るコースや同線小川駅から長福を経てのコースなどがあり,山頂から月居山まで縦走するコースなども知られる。周辺には暖地性植物や北方系が分布し,珍しい植物としては大子町袋田で発見され,奥久慈地方や栃木県に分布するフクロダガヤや,秩父の武甲山や奥久慈地方にだけ分布するミヤマスカシユリが有名。山頂から快晴の日には太平洋・富士山も眺望でき,新緑・紅葉の季節には素晴しいパノラマが展開する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7038832