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真弓山
【まゆみさん】


多賀山地南部に位置する標高約300mの山。古生代の角セン岩・結晶片岩から構成され,石灰岩も多い。南部は久慈川支流の茂宮川に浸食されて開析が進み,山麓に沿って柳沢・弁天栄坪・仲・宿・御手洗・仲城などの集落が発達している。山麓から産出される大理石は,古生層の石灰岩が花崗岩の貫入を受けてできたもので,白色の大理石で結晶粒がやや大きい。炭素分や粘土分を含み縞状をなしたり,角セン石・緑泥石・緑レン石の縞状のものもあり,研磨すると素晴しい自然のデザインを見せてくれる。「新編常陸」には「久慈郡大森瀬谷二村ヨリ出ルヲ縞寒水石ト云」とある。これらは真弓の大理石または水戸の寒水石とよばれ,装飾用・建築材として利用されている。山頂付近には大同2年の創建と伝えられる真弓神社がある。祭神は大己貴命,少彦名命。源義家が奥州遠征の折,真弓山にのぼり戦勝を祈願したという伝承があり,このため陣ケ峰ともよばれた。義家はこの峰で六月朔日を元日とし,越年の祝をしたが,その時雪が降り,義家が腰をおろした所が白い石となったので寒水石とよぶようになったという(同前)。寒水石の採掘は江戸初期から行われ水戸藩の特産物であった。弘道館記碑は真弓の寒水石に刻まれている。石材の採掘場は南側にあり,肥料・セメント原料としても利用されている。樹齢900年といわれる爺スギ(真弓神社の巨スギ)は県天然記念物。真弓山への登山コースとしては国鉄常磐線大甕(おおみか)駅(日立市)からのコースと国鉄水郡線常陸太田駅からのコースが代表的なものである。山名は源義家が奥州遠征の帰途に山頂の神社に真弓(弓の美称)を奉納したことにちなむといわれている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7039776