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谷原
【やわら】


利根川下流域左岸一帯の低地をさす地域称。「風土記」信太郡の条に「風俗の諺にいへらく,葦原の鹿は,其の味,爛(くさ)れるごとしといへり。喫(くら)ふに山の宍に異れり。二つの国(常陸と下総となり)の大猟も,絶え尽すべくもなし」と見える「葦原」の地といわれる。また「利根治水論考」によれば,谷原は布川より下流の下利根北岸低地の総称という。「郡郷考」には葦原とは,竜ケ崎より東南の常総・下総に分隷する谷原領を称し,「広莫なる新田数十村の開墾せざりし時の名にて,二国の界に在りし地故に,二国の猟したる也」と述べられている。近世初頭の谷原は,鬼怒(きぬ)川・小貝川が寺畑地内で合流していたため,一大沼沢地を形成していた。寛永2年関東郡代伊奈忠治が谷原で滞流していたこの2河川を分離させた結果,新田地として干拓が進行した。寛永2年小貝川通り山田沼に設けられた萱洗堰である山田沼堰を水源として用排水路が各所に設けられ,常陸谷原3万石・相馬谷原2万石と称される新田地が誕生した。その後寛文年間押付新田から霞ケ浦に直線状に流れる谷原新川(新利根川)が新しく掘削されたが効果はなく,まもなくもとの河道に復するようになった。流路は直道のうえ勾配が急であったため,干水時には渇水で舟の航行に支障をきたし,洪水時には沿岸の村々へ大水害を招いたためといわれる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7040219