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奥鬼怒
【おくきぬ】


県北西部の鬼怒(きぬ)川上流一帯。行政上はほぼ塩谷郡栗山村域に当たり,福島・群馬両県と接し,南は奥日光,西は尾瀬に至り,日光国立公園の一部。鬼怒川最上流部の素朴な山の湯,沿岸に成立した特有の民俗を持つ山地集落に特色があったが,鬼怒川流域の総合開発に伴うダム建設,道路網の整備,スーパー林道問題などにより耳目に触れることの多くなった地域である。当地方の県境は黒岩山(2,163m)―鬼怒沼山(2,141m)―物見山(2,117m)―燕巣(つばくろす)山(2,212m)が連続し,帝釈(たいしやく)山地の南部を構成する。鬼怒沼山の南にある数十の小沼沢群を鬼怒沼と呼び,標高2,040mに達し一帯は典型的な高層湿原である。ショウジョウバカマ・ワタスゲ・コバケイソウなどの植物群落が豊富に分布し,昆虫,特にトンボが多い。周辺部の森林はコメツガ・アスナロ・オオシラビソなどの針葉樹が卓越する。鬼怒川は鬼怒沼を水源とし,南の日光諸火山の水も合わせて東流する。水源近くの最上流部にはひなびた山の温泉,奥鬼怒四湯が存在する。4湯は享保年間に開発された最古の八丁ノ湯,標高1,400mの加仁湯とともに鬼怒川本流沿いにある2湯,支流手白沢沿いの手白沢温泉,最奥の日光沢にある日光沢温泉をいう。手白沢温泉から5.5kmほど南には国天然記念物湯沢の噴泉塔があり,その奥の源流付近のヒナタオソロシノ滝,オロオソロシノ滝を経て鬼怒沼の湿原に,さらに鬼怒沼山を経て尾瀬に至る。また金精峠を経て日光湯元温泉とも結び,いずれも登山コースで一帯の地域は豊かな自然に恵まれている。鬼怒沼周辺は特別保護地区,鬼怒川沿いは特別地区に指定されている。奥鬼怒四湯下流部に女夫淵(めおとぶち)温泉・川俣温泉(間欠泉)があり,両温泉まで自動車で入ることが可能であるのは昭和40年瀬戸合峡にアーチ式の川俣ダムが建設され上流部に川俣湖ができたことによる。総貯水量8,760万m(^3)の川俣湖は山深い峡谷にさらに変化を与え,道路の整備と相まって観光化が進み,同56年,下流に川治ダムが完成したことにより多くの観光客が訪れる。鬼怒川上流部には川俣・野門・上栗山,支流の土呂部川沿いの土呂部など,段丘上に山村が点在する。隔絶性の強い山間部特有の生活を営んでいたが,現在は生活も近代化され,伝統的な林業に加えて高原野菜やキノコの栽培,養蚕,肉用和牛の飼育なども行われている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7041097