塩原渓谷
【しおばらけいこく】

箒(ほうき)川渓谷ともいう。那須郡塩原町を東流する箒川がつくる渓谷。上流の塩原盆地からの溢水が，かつての旧塩原湖をせき止めた高原火山からの溶岩を開析し，激しく下刻し，急峻なＶ字谷をつくり，本県を代表する渓谷美を誇っている。当渓谷は中塩原の下から始まり，下塩原・大網を経て，関谷の平地に出るまで約６km続く。下流から回顧滝・魚止の滝・稚児の滝・布滝・天狗岩・野立岩・七ツ岩などの名瀑・名勝が連なり，特に狭隘部となっている潜竜峡や，布滝の左岸の支流の奥にある竜化滝は名高い。その他渓谷沿いに続く塩原街道は難所が多く，左靱や白雪洞の名跡もある。江戸期までは訪れる人も少なかったが，明治31年の尾崎紅葉による「金色夜叉」と奥蘭田の「塩渓紀勝」の名文により渓谷美が紹介された。特に春秋の景観に富む。昭和40年，塩原バレーラインの開通で紀行も至便となった。昭和46年渓谷の出口付近に堤高60m・堤頂長240mの塩原ダムも完成した。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7042050