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弥五郎坂
【やごろうざか】


塩谷郡喜連川(きつれがわ)町早乙女にある坂。塩谷郡氏家町松山方面からは塩那丘陵を越えて早乙女の羽黒に至るが,所在は喜連川町。かつては早乙女坂と呼ばれたが,現在は弥五郎坂が一般称。坂名は,かつて周辺に宇都宮尚綱(俊綱)と那須高資の合戦があり,弓の名手であった那須方の鮎ケ瀬弥五郎実光が,尚綱を討った武勇に由来すると伝え,旧奥州街道の丘陵頂上付近に弥五郎殿と呼ばれる五輪の塔がある。坂名は固有の坂に対する呼称ではなく,周辺3道上の坂をそれぞれ弥五郎坂といい,総称的に用いられる。1つは,国道293号上の坂で,地元では一般に弥五郎新道と呼ばれる。国道は,明治期に敷設された喜連川人車鉄道が廃止されたあと,その道筋がルートとなっている。他は,国道西方の2道で,ニッカウヰスキー原料貯蔵庫北方で分岐し,一方は旧奥州街道,他方は町道である。旧奥州街道は現在廃道同様の,シノザサの生い茂る小道となっているが,江戸後期,古川古松軒が「東遊雑記」に「江戸を出でしより,この所初めて坂を越ゆるなり」と述べているのはこの道の坂である。町道の方には,カーブする道の傍らに河東碧梧桐の「坂を下りて左右に薮あり栗落つる」の句碑がたつ。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7044014