100辞書・辞典一括検索

JLogos

9

綾戸渓谷
【あやどけいこく】


沼田市岩本町から勢多郡赤城村大字棚下(左岸),北群馬郡子持村大字上白井字桜の木(右岸)の間,1km余の渓谷。利根川の浸食作用により形成されたもので,百数十mの絶壁をなしている。地名の由来については不詳だが,特に紅葉の季節には,岩壁が綾織りの絹を張りめぐらしたように彩られることによるとの説がある。綾戸渓谷左岸は赤城火山系の凝灰角礫岩,右岸は子持火山系の複輝石安山岩からなる。渓谷入口の岩本はその名の通り「岩のもと」であり,出口の棚下はまさに岩石からなる「棚の下」となっている。現在は右岸を国道17号,左岸を県道津久田下久屋線が走り,JR上越線が棚下の岩壁を貫き,利根川をまたいで走っている。関越自動車道も渓谷から1kmほど東の標高約430mの浸食崖の上を走り,渓谷とその付近は太平洋側と日本海側を結ぶ重要な交通路となっている。綾戸渓谷は石材の産出地でもある。明治13~18年,国道開削の工事に参加した石工宗村氏が,石質の良いことに着眼し,石材として搬出したのに始まり,棚下石として各地に売り出された。綾戸渓谷入口の岩本には綾戸ダムがあり,下流の勢多郡北橘村下箱田にある佐久発電所(昭和3年完成,最大出力7万2,700kw,当時は日本一)の取入口と群馬用水の取入口になっている。綾戸渓谷は県内の交通と用水,観光,産業などの面で重要な役割を担っている地域である。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7044375