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尾瀬ケ原湿原
【おぜがはらしつげん】


群馬・福島・新潟県境にある低層・中間・高層湿原。標高約1,400m。東西6km・南北2kmの本州最大の湿原で,日光国立公園に属する。湿原は燧ケ岳の南西,尾瀬沼の西に位置し,利根郡片品村・福島県南会津郡檜枝岐(ひのえまた)村・新潟県北魚沼郡湯之谷村に及ぶ。面積約8km(^2)。湿原は大きく上田代・中田代・下田代に区分でき,本県は上田代・中田代など全体の3分の2の区域を占めている。起源は約1万年前の燧ケ岳の火山活動に始まる。噴火による溶岩や火成砕屑物が只見川をせき止め,古尾瀬ケ原湖を形成した。約6,000年前から溶岩流の浸食,土砂の流出,ミズゴケなどの挺水植物の進出と泥炭化により湿原化されてきた。周囲は至仏山(2,228m),アヤメ平(1,969m),燧ケ岳(2,346m),景鶴山(2,001m)に囲まれ,それらから流れる約20本の渓流により涵養されている。湿原の水は北東端から平滑ノ滝・三条ノ滝を経て只見川に流出する。湿原では低温のため植物の遺体が分解しないで堆積し泥炭となり,その程度により低層湿原・中間湿原・高層湿原に区分されている。ヨシやミズバショウを中心とした低層湿原は泥炭の堆積が少なく,湿原の周囲や河川沿いに,あるいは拠水林付近に分布している。泥炭の堆積が多くなると,ヌマガヤやミズゴケが生育しはじめ中間湿原になる。中間湿原は外縁部よりも内側に多く分布している。さらにミズゴケ泥炭が堆積し,谷地坊主(ブルト)という小さな盛り上がりがつくられ,それが連なって高層湿原がつくられる。ミズゴケ・ホウセンゴケ・ホロムイソウなどの植生がある高層湿原は上田代・中田代・下田代などの中心部に広く分布している。高層湿原は凸凹を繰り返しながら,毎年1mmずつ高くなっており,凹部にはミズゴケが生育しないで水が溜り,池塘が発達している。高層湿原には大小300以上の池塘があり,そのなかに浮島が丸い形で浮いている。湿原の周囲はブナを主体とする落葉広葉樹の原生林で覆われている。貴重な動植物や自然景観を保護するため,昭和28年3月22日に特別保護地区に指定された。積雪は11月上旬から5月上旬まであり,その量は4m前後に及ぶ。5月中旬のミズバショウの開花から10月上旬の紅葉までが行楽シーズンである。入山口は鳩待峠口・富士見峠口・大清水口・沼山峠口(福島県)・尾瀬御池口(福島県)の5つであるが,鳩待峠から山ノ鼻を経て,上田代・中田代・下田代と進むルートが最も一般的である。鳩待峠から山ノ鼻までは徒歩1時間,山ノ鼻から見晴までは2時間の行程である。湿原には自然環境を保護するため木道が整備されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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