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秩父盆地
【ちちぶぼんち】


県の西部を占める秩父山地の中央にある,一辺10kmのほぼ四角形の盆地。周囲の秩父山地と断層によって区切られている。盆地の西南側は,標高2,000m級の奥秩父の諸峰が連なり,北東に向かって次第に高度を下げ,盆地の東側の外秩父山地は八王子構造線を境として関東平野に接している。第3紀層よりなる盆地床は荒川とその支流によって開析され,上・中・下位の河岸段丘が発達している。上位段丘としては左岸の尾田蒔(おだまき)丘陵,中位段丘としては右岸の羊山丘陵が有名で,ともに関東ローム層をのせているが,秩父市街地をのせる下位段丘はロームを欠き,平坦面が多い。下位段丘面は秩父地方の産業・交通・生活の拠り所で,中心地の秩父市をはじめ,皆野(みなの)・長瀞(ながとろ)(荒川本流沿い)の両町のほか,西秩父の赤平(あかびら)川沿いには小鹿野(おがの)・吉田両町が発達している。江戸期には,秩父大宮の1・6の六斎市をはじめとして,野上(今の長瀞町)の2・7,吉田の3・8,小鹿野の5・10などの六斎市で,特産の秩父絹の取引が盛んであった(新編武蔵)。盆地の鉄道は秩父鉄道(昭和5年3月開通)と西武鉄道(昭和44年10月開通)の2線。バスは西武秩父駅をターミナルとする西武バス,秩父鉄道バス・村営バスなどが,各町村を結んでいる。道路は,国道140号・299号を幹線とし,主要地方道4線,一般県道28線などがある。近年は,林道や観光道路の開発から旧峠道の交通がふたたび盛んとなった。盆地内の産業には狭い平坦地や山の緩斜面でのコンニャクやシイタケづくりなどの農業,周囲の山地から集まる木材の製材,養蚕とその織物生産(秩父銘仙)等がある。また武甲(ぶこう)山の石灰岩と丘陵の粘土を原料としたセメント産業も盛んである。秩父は上古においては,知々夫国と呼ばれ,国造の知々夫彦命が治めていた。秩父神社は,知々夫彦命をまつり,秩父地方の氏神として,例年12月1日から6日まで,大祭(秩父夜祭)が行われる。また,和銅の発見と献上(708年),防人歌碑(吉田町)などが示すように古くから開けていた。観光としては,秩父多摩国立公園をはじめ,県立の奥武蔵・武甲・長瀞玉淀(ながとろたまよど)自然公園が指定されている。秩父札所三十四番,秩父七湯などの鉱泉旅館・民宿・キャンプ場・ゴルフ場・スケート場,最近盛んとなったぶどう狩り・栗園・シイタケ狩り・イモ掘りなどの観光農園で知られ,観光地として賑わいをみせている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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