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安房丘陵
【あわきゅうりょう】


房総半島南部,嶺岡山以南の丘陵性山地。北は加茂川,保田川流域の加茂川・保田地溝帯を挾んで,鋸山と清澄山を結ぶ山系以北の上総丘陵につながり,両者を総称して房総丘陵ともいう。安房丘陵は東京湾岸の館山市北条・那古から太平洋岸の丸山町に及ぶ幅5kmの館山(北条ともいう)地溝帯や,寄木細工状の地塊群や小丘陵群で構成される。県内最高峰の愛宕山(408m)をもつ嶺岡山は,新第三紀中新世の中頃に丹沢造山運動に伴い,古第三紀層で珪質頁岩・細粒砂岩を主に石灰岩・チャートを含む嶺岡層群が,閃緑岩・斑糲岩・蛇紋岩などの火成岩類が貫入する火成活動を伴って隆起したもので,県内では銚子(ちようし)地域とともに最古の地質である。嶺岡山地以南の新第三紀中新世の堆積物である保田層群・安房層群の隆起も同紀鮮新世に始まったが,第四紀洪積世に嶺岡山を残して海水面の上昇のため水没した。洪積世後期になると海水面が後退し,南端の中新世の堆積物である豊岡亜層群を含めて再び陸化した。嶺岡山地の南の御殿山(364m)・経塚山山塊は南北と東西方向の断層で切られ,ほぼ四角形の外形をもつ地塊となり,その東の大塚山(175m)を中心とした100~150mの丘陵は太平洋岸に近づくと急崖となり,その下には江見・和田浦海岸の海岸段丘が発達する。大塚山丘陵から館山地溝帯にかけては海岸に面した小起伏丘陵地の丸山丘陵となる。西岸は富山(とみさん)(350m)やその東の伊予ケ岳(337m)の富山山塊となり,岩井川の低地を挾んで断層崖の急斜面をもつ富浦丘陵につながり,館山地溝帯へと続く。館山地溝帯以南は千倉(ちくら)町の高塚山(216m)を含む100~200mの丘陵となる。安房丘陵から太平洋岸には曽呂川・三原川・丸山川・瀬戸川・長尾川・巴川などが流れ,西岸の東京湾岸には佐久間川・岩井川・岡本川・平久里(へぐり)川・汐入川などが流れているが水量は多くなく,農業用ダムや上水道用ダムが数か所あるだけで河川の開発は十分とはいえない。山間の農家は稲作や乳牛飼育を行っている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7052829