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浮島
【うきしま】


房総半島南西部,勝山海岸の沖合い約600mに浮かぶ無人島。鋸南町勝山に属す。本島と大小2つの属島(大ボッケ島・小ボッケ島)とからなる。「房総志料続篇」に「見通しの洞穴二つありしが,今は一洞の上かけて嶼の形両断となる」とあるのは属島の生成を示す(房総叢書)。本島の面積0.05km(^2),周囲は標高約55mの絶壁をなし波上に浮かぶごとく見えるので,この名があるといい,また古くは鵜来(うき)島とも書いた(鋸南町史)。平安初期の「高橋氏文」によれば,景行天皇53年,東国巡幸の途中のこととして「冬十月到上総国安房浮島宮,爾時磐鹿六臈命従駕仕奉矣」とあり,当島に景行天皇行宮が置かれたという。現在も島内に景行天皇を祀る神社がある。下って,戦国期「いろは字」下の永禄2年12月10日付奥書に「乱居窂落之内,於浮嶋・井谷・宮谷・犬懸等,弘治丙辰草案既畢」とあるのは当島のことと思われ(妙本寺文書/県史料諸家),天文22年7月金谷城(現富津市金谷)の兵火で城内に疎開していた聖教・典籍類を失った里見方の日我が,その後一時当島に住したことが知られる。浮島は古来その景勝で知られ,水戸光圀の「甲寅紀行」には「岩石嶢屹,秀奇にして多景なり」と印象を述べ,「山はみな小篠生ひ茂り,小松所々にあり,中に浮島大明神の社ありと云ふ」とある(房総叢書)。また「房総志料」巻2に「嶋中に美竹を生ず,潤節堅緻,村童きりて牧笛とす」とあり(同前),現在も島南西部に女竹(めだけ)の群落が分布するが,島北部に県下有数のタブノキ林がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7053154