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高宕山
【たかごやま】


君津市と富津(ふつつ)市の南部の境にある山。標高315.1m。高宕山県立自然公園のうち。鹿野山から,上総・安房の国境に連なる房総丘陵に延びる山稜のほぼ中間に位置する。東側は君津市で小糸川の上流部,西側は富津市で湊川の支流の高宕川の源流にあたる。富津市側には昭和31年に国天然記念物に指定された野生の日本猿の生息地として知られる高宕山ニホンザル自然動物園がある。山名の由来は高くて,ほら穴のある山ということによる(君津郡誌)。山頂付近に,無人の高宕観音があり,奥の院にあたる山頂には,大小2個の鉄釜がある。高宕観音は,天平年間に僧行基の開山と伝えられる。また,治承4年には源頼朝が安房から当地に赴いたときに,武運長久を祈ったと伝えられ,のちに頼朝は,観音の霊験に感謝して,純金製1寸8分の観音像を奉納,現在は富津市田原にある満福寺に保存されているという(同前)。また,山頂の2つの鉄釜は,頼朝が煮炊きをした釜と伝えられ,上総南部から安房一帯にかけて,雨乞いの釜として近年まで信仰されていた。この釜の水は,どんな干天のときでもかれたことがないといわれ,日照りの際は,近在の農村から代表者が竹筒を持って,この釜の水をもらいに集まった。これを水借りと呼び,代表者はその日のうちに村に帰って,田畑に竹筒の水を流すと雨が降るといわれ,人々はそのお礼に,竹筒に水を入れてこの釜に返納したという。現在,この習慣は行われていないが,当山は上総南部から安房一帯にかけて,雨乞いの対象の山とされていた。山頂に至る,かつての信仰の道は,現在登山道として利用されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7055427