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養老渓谷
【ようろうけいこく】


県中部,市原市と大多喜町の境界付近の養老川の渓谷。養老渓谷奥清澄県立自然公園に属する。第三紀と第四紀の境界にあたる暗褐色の砂岩層を主体に灰白色の泥岩層を挾んだ梅ケ瀬層が浸食されて深さ40mほどの谷をつくり,川床は硬い地層と軟らかい地層の境目に小さな崖ができ石畳となる。渓谷の中ほど,大多喜町麻綿原(まめんばら)に発した蕪来(かぶらい)川が養老川に合流するところには,昭和54年5月に雨水の浸透と風化で天井部分が崩れるまで弘文洞と呼ばれる岩のトンネルがあり,その中を蕪来川の清流が流れ渓谷随一の奇勝とされた。弘文洞は,付近に弘文天皇行幸の伝説が多いところから付けられた名で,蕪来川の蛇行部を水田にするため養老川と直線で結んだためにできたものであった。言い伝えによると江戸期に渓谷左岸の塚越集落16軒と右岸の葛藤集落30軒が殿様に川廻しの工事を願い出ると,早く工事を終えた方が許可されることになった。葛藤集落が人数が多いので油断しているうちに塚越集落が昼夜兼行で工事をして2町歩の田地を増やすことができたという。弘文洞は,こうしてできたトンネル内の泥岩層が節理面に沿って次第に風化・浸食され,節理のない天井部分の砂岩層が残って中央部で幅の広い縦長の楕円形となったもので,高さ約30mの洞門であった。渓谷一帯は川釣りの名所で,春はヤマベ・ハヤ,夏はアユ,秋から冬にかけてはニジマスが釣れる。また両岸は,春にはフジやツツジ,秋には紅葉が楽しめる。渓谷には鉱泉の養老温泉と渓谷1周7km遊歩道があるほか,麻綿原・清澄山を結ぶハイキングコース,キャンプ場がある。渓谷までは小湊鉄道養老渓谷駅からバスの便がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7057747