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山の手
【やまのて】


江戸期~現在の広域地名。下町(したまち)の対称地名。江戸・東京の高台地帯を指す。井原西鶴の「好色一代男」(天和2年)巻6に,吉原の太夫よし田を寵愛した「山の手のさる御方」云々とあるのが,比較的古い用例である。さらに鹿野武左衛門らの噺本「枝珊瑚珠」(元禄3年)にも「山の手のよし様」云々と見え,江戸前期から一般に用いられていたことがわかる。滝沢馬琴の「玄同放言」(文政元年)によれば「四ツ谷,青山,市ケ谷,北は小石川,本郷をすべて山の手という」とあり,山の手は武家屋敷が多く,また郊外との接点でもあったので,「江戸内にても田舎めきて,下町辺とは言葉も少し違いたる」(江戸自慢)と評された。明治期の山の手の範囲も,江戸期とほぼ同じであり,およそ本郷・小石川・牛込(うしごめ)・四谷(よつや)・赤坂・麻布(あざぶ)の各区を指したが,「土地高燥,阪路随て多く,其の繁盛下町に及ばざるも,貴顕紳士の邸宅は最も此地に多し」(野崎左文:日本名勝地誌)というように,下町の商業地に対する山の手の住宅地という機能差が明確になった。大正12年の関東大震災以後,周辺農村部へ住宅地が拡大したため,山の手の範囲が中野・杉並・目黒・渋谷・世田谷区にまでひろがり,今日もなお西の方へと山の手の概念は拡大しつつある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7065132