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足柄平野
【あしがらへいや】


県西部の酒匂(さかわ)川下流に広がる沖積平野で,小田原市・南足柄市・足柄上郡開成町にまたがる。北縁は足柄山地,西縁は箱根山地,東縁は比高100mの急崖をなす活断層の国府津松田断層に限られる。足柄平野の北部は,酒匂川本流や秦野(はだの)盆地から流出する川音川等の扇状地が重なった複合扇状地で,自然堤防が平野上に何列もみられる。これは過去に大きな氾濫が繰り返されたことを示すもので,報徳精神で有名な小田原市栢山(かやま)生まれの二宮尊徳の逸話とともに現在まで語り継がれている。金井島・吉田島・千津島・牛島などの島のつく地名は自然堤防上に位置する集落名で,洪水のすさまじさがうかがえる。このため小田原藩主大久保氏をはじめとして多くの人が酒匂川の治水と灌漑に努め,田中兵庫による文命堤の建設や山北(やまきた)の名主湯山弥五右衛門による皆瀬川の流路変更などが行われた。南部は北部に比べて傾斜も緩く,平野中には千代台や鴨ノ宮台のようなわずかに高い台地状の地形がある。当平野は水利条件に恵まれ,地表下1~8m位の浅いところに地下水面があり,各所に自噴泉がみられる。この良質な地下水を条件にして,富士フイルム・江戸川化学などの化学工業の立地がみられる。古くからの水田地帯であった当平野も現在は都市化が進む。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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