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泉ケ谷
【いずみがやつ】


鎌倉市扇ガ谷,英勝寺の北東,泉谷山と号する浄光明寺のある谷名。泉ノ谷ともいう。谷名の由来は不明であるが,谷の中には鎌倉十井の1つ泉ノ井がある。鎌倉期から見える。「吾妻鏡」建長4年5月19日条に「亀谷泉谷右兵衛督教定朝臣亭」と見え,将軍宗尊親王の方違の本所を藤原教定の泉谷亭と定め,7月8日および9月25日に入御したことが見え,当地が亀谷のうちにあったことがわかる。金沢文庫所蔵の鎌倉期の紙背文書に「いつみのやつ」と記され,「沙石集」にも「泉ノ谷」とみえるから「泉ノ谷」というのが古称であろうか。いずれにしても「泉谷」は,鎌倉期からの名称として誤りあるまい。なお,当地にある浄光明寺は,寺伝では建長3年の草創と伝え,開基は北条長時と伝えるが(鎌倉市史社寺編),永仁4年正月23日の真阿譲状によれば「所詮固守最明(寺脱)殿(北条時頼)并武州(北条長時)聖霊等本願主御素意」とあり,時頼と長時とも考えられる(浄光明寺文書/県史資2‐1195)。「吾妻鏡」文永2年5月3日条によれば,故北条長時の忌景として「泉谷新造堂」において仏事が修されており,この堂は浄光明寺境内に建てられたものと思われる。また「吾妻鏡」同年6月10日条には「終日降雨甚,亀谷并泉谷所々山崩,人々多土石被圧死」とあり,大雨のため山崩れがあり死者多数が出たことが知られる。「新編相模」鎌倉郡扇ケ谷村の項に泉ケ谷が見える。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7065706