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瓜ケ谷
【うりがやつ】


鎌倉市山ノ内,北鎌倉駅の南西に広がる谷名。東瓜ケ谷と西瓜ケ谷とがあり,現在も小字が残っている。鎌倉期から見え,正慶2年5月16日の沙弥道貞避状(円覚寺文書/県史資2-3079)に「山内瓜谷口屋地事」とある。文安3年10月2日の古教妙訓証文に「正続院領山内瓜谷山上地〈昭西堂跡〉」とあり,名越の花ケ谷より目足(もくそく)寺(木束寺・無垢息寺とも)を山内瓜谷口山上の昭西堂の跡地へ移造したことが知られる(黄梅院文書/県史資3下-6069)。この昭西堂跡は,文保2年5月22日の北条高時袖判下文に見える「山内地〈昭西堂跡〉」にあたり,薩摩掃部大夫成綱に安堵されている(円覚寺文書/同前2-2129)。なお,この薩摩掃部大夫入道跡の場所は,建武頃作成と推定される円覚寺境内図の下端に見える。この谷には5穴からなるやぐら群があり,その中の地蔵やぐらと呼ばれる群中最大のものは,内部彫刻の種類が多いことでよく知られている。この山ノ内の瓜ケ谷のほかに,「攬勝考」には妙本寺のある比企ケ谷の別名を瓜ケ谷と称することが見える。比企禅尼が邸の前庭に瓜園を作って源頼朝や政子もそこで遊んだことにちなむという。同書に「廻国雑記」の「ひと夏はとまりかくなり暮過て 冬にかゝれる瓜かやつ哉」の詠歌を引いて「中古以来其唱へはなけれとも,文明の頃迄は称したる」とする。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7065926