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大涌谷
【おおわくだに】


足柄下郡箱根町仙石原にある。箱根火山中央火口丘である神山の北麓に位置する,標高800~1,150mの噴気地帯。この火山性水蒸気を利用した造成温泉は強羅・仙石原などの旅館やホテル・保養所などへ給湯され,当地には宿泊施設はない。源泉数2孔・温度70℃・火山性水蒸気による造成温泉量は毎分3,890ℓ(昭和57年)。泉質は石膏泉・含石膏硫化水素泉・含食塩重炭酸土類泉など。リウマチ性疾患・高血圧症・動脈硬化症・創傷・皮膚掻痒症などによい。明治20年,当時東京帝大教授であったドイツ人医学者ベルツは,この噴気地帯に注目し,そこに温泉治療所を建設するように宮内省に建白書を提出した。しかしこの意見は結局とりあげられず,明治20年代の大涌谷噴気地帯は,硫黄の採取地としてのみ利用された。本格的な開発は,昭和5年からで,噴気孔の蒸気と地表水を混合して温泉を造成し,給湯事業が行われた。温泉造成は降水量の多少により左右され,不安定な状態が続いていたが,昭和29年からはイタリー池からの給水が開始され,その量は安定した。昭和30年代の後半からの給湯は横穴湧出泉・噴出蒸気注水造成泉・硫気地帯散水造成泉が混合されたが,現在では大部分を噴出蒸気注水造成泉が占める。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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