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塔ノ岳
【とうのたけ】


塔ケ岳(とうがたけ)・尊仏(そんぶつ)山・孫仏山とも呼ぶ。愛甲(あいこう)郡清川村・秦野(はだの)市・足柄上郡山北(やまきた)町の境にある山。丹沢山地の中央部,丹沢表尾根の西端部に位置する。標高1,490.9m。ブナやヒノキ・ハリモミ・ゴヨウツツジ・サラサドウダンなどの樹林がみられ,なかでもブナ林は首都圏に残された貴重な植生である。珍しい植物としてハコネコメツツジ・テマリタマアジサイ・オトメアオイ・ヒコサンヒメシャラなどがみられる。一般には塔ケ岳と呼ばれているが,本来は塔ノ岳。山名は,昔,頂上にあった立石から起こったといわれる。この岩は孫仏岩(尊仏岩)と呼ばれ,高さ5丈8尺ほどで雨乞の神として,また農神として山麓の人々の信仰を集め,岩に生えていたコケにも薬効があるとされていた。岩は関東大地震で頂上から転落し,大金沢へ落ちてしまった。山麓の人々はこの岩を「お塔」と呼び,お塔のある山という意味で「塔ノ岳」という名称がついた(新編相模)。塔ノ岳尊仏さんの祭日は毎年5月15日で,この日はかつては近郊近在から多くの人が山に登ってにぎわった。今では丹沢山中で訪れる人の最も多い丹沢表尾根の中心で南の大倉,南東のヤビツ峠,北東の札掛(ふだかけ),西のユーシンからと登山路は多く,北の丹沢山,南西の鍋割(なべわり)山へ縦走路が延びる。山頂には尊仏山荘・日ノ出山荘がある。かつては山頂もブナ林で覆われていたが,登山者の増加,燃料用の伐採などで裸地化している。山の地質はいわゆるグリーンタフ(緑色凝灰岩)からなる新第三紀中新世の丹沢層群下部の地層が分布する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7068090