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箱根火山
【はこねかざん】


県南西に位置し,静岡県との境にある火山。北西の金時山から南の鞍掛山までの山域をいう。最高峰は神山(1,438.2m)である。更新世中~後期にかけて形成された三重式火山で,2回のカルデラ陥没の後,中央火口丘を形成し現在に至る。箱根火山の第1期活動は約40万年前で,厚さ700mの火山砕屑物からなる標高約2,700mに及ぶ成層火山が形成された。その中ごろに北西から南東方向の断層運動により,北西山腹には金時山,南東山腹には幕山といった寄生火山ができた。その後山体中央部は陥没し,そのためにできたカルデラは,南北11km・東西7kmに及ぶ(現在確認できるもの)。古期外輪山は現在もよく保存され,東から塔ノ峰・明星ケ岳・明神ケ岳・乙女峠・長尾峠・湖尻峠・箱根峠・大観山と連なる標高1,000m前後の稜線として見ることができる。第2期活動は約13万年前で,拡大したカルデラ内に厚さ300mの安山岩質の溶岩からなる楯状火山を形成した。そしてこの末期に楯状火山の西側は陥没し,新期外輪山が形成された。これらは碓氷(うすい)峠南側から浅間山・鷹巣山・屏風山に見られる。約5万年前,軽石流が中央火口から流出し,古期外輪山の外側にも流れ,堆積した。現在の中央火口丘は第3期活動によるもので,カルデラ内に約3万~3,000年前の間に誕生した。中央火口丘は7つを数え,すべて安山岩質である。神山が成層火山のほか,駒ケ岳・台ケ岳・上二子山・下二子山・小塚山などは溶岩円頂丘である。現在の火山活動は,大涌谷・早雲山・湯の花沢などで硫気活動が見られる程度である。カルデラ内には,カルデラ湖の芦ノ湖がある。これは約3,000年前の神山の爆発により生じた通称神山崩れが湖尻方面に流れ,早川をせき止めてできたものである。芦ノ湖の水は古期外輪山の下を深良用水として静岡県側に引かれ,灌漑に利用される。山中の動物は大型哺乳類以外は認められ種類も多い。特にハコネサンショウウオは有名。植物は高等植物だけで1,800種以上とその数は多く,なかでもハコネコメツツジ・ハコネバラ・ヒメシャラ・マメザクラ・ヤマボウシは有名である。しかし,観光開発が進むにつれて,これらの動植物は減少しており,その対策が重要になっている。当火山は首都圏に近く温泉観光地・温泉保養地としては日本を代表するものである。温泉は古くから知られ,江戸期には箱根七湯といわれた温泉郷も現在は18湯になった。こうした開発は明治以降わずかずつ進み,大正8年湯本~強羅間の登山鉄道開通により盛んとなった。別荘・保養所などは強羅・仙石原を中心に開発され,現在は他の地域にも拡大した。カルデラ内や古期外輪山の山腹にはゴルフ場も造成されており,駒ケ岳山頂にはスケート場もある。観光道路は古期外輪山上を箱根ターンパイク・芦ノ湖スカイライン・長尾スカイラインが通る。山中は古代から東国と西国を分ける天下の嶮として知られ,碓氷道・湯坂道・箱根権現参詣道・東海道など箱根越えの変遷がみられる。碓氷峠・早雲寺・元箱根石仏群・箱根神社・箱根関所跡・旧東海道などの名所・旧跡が数多くある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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