100辞書・辞典一括検索

JLogos

11

湯坂山
【ゆさかやま】


足柄下郡箱根町にある山。湯本の西約2km,箱根火山の新期外輪山から東に派生する尾根上に位置する。標高546.8m。湯本の背後にそびえることから湯の脊(ゆのせ)山または湯ノ瀬山と呼ばれた。湯本から湯ノ脊山に登る途中を湯坂といい,山名はここからついたと思われる。小田原大森氏の山城があったことから城山(じようやま)とも呼ばれた(新編相模)。現在,湯坂山城跡と思われる地点が尾根上の標高275m・520m付近の2地点あり,土塁を残しているが,解明はされていない。富士山の爆発に伴い閉鎖となった足柄道に代わって,延暦21年開かれた湯坂道が通る。湯坂道は湯本から湯坂山を経て,浅間(せんげん)山・鷹巣山を越え,芦之湯・元箱根・湖尻峠を通り静岡県三島へ抜ける古道である。治承4年石橋山の合戦で敗れた北条時政父子は当山を越えて,甲州へ落ちのびた(吾妻鏡)。曽我兄弟は建久4年に源頼朝の富士野での狩の際,当山を通り箱根権現に参詣している(曽我物語)。また阿仏尼が京から鎌倉へ行く時もここを通り,「十六夜日記」に「いとさがしき山を下る。人の足もとどまりがたし。湯坂とぞいふなる。からうじて越え果てたれば,また麓に早河という河あり。まことに早し。木の多く流るるを,いかにと問へば,海人(あま)の藻塩木(もじほぎ)を浦へ出さむとて流すなりといふ。東路の湯坂を越えて見渡せばしほ木流るる早川の水」と記している。新期外輪山に属する輝石安山岩質溶岩からなる。北麓を早川,南麓を須雲川が流れるが,これは古期外輪山と新期外輪山の間を浸食しているものである。登山道は湯坂道のほか奥湯本から途中で湯坂道に合流するものがある。いずれも険しい。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7069558