100辞書・辞典一括検索

JLogos

9

北陸地方
【ほくりくちほう】


古くは「ほくろく」といった。五畿七道の北陸道の地域で,現在の石川・富山・福井3県がこれに当たる。北陸という名称は「延喜式」にも見え,古代には「越(こし)の国」といわれた。日本海側のほぼ中央部に位置し,南は峻険な山並みによって太平洋側と隔てられ,冬季は北西の季節風が厳しく深雪になり,背後の山地から流下する河川は急流であるという自然条件が共通している。日本の政治・経済・文化の中心が太平洋側にあったこともあって,裏日本とも呼ばれた。しかし必ずしも辺境後進地域ではなく,中央との交通難を海上交通によって補い,いわば両者の中間地域として位置づけられてきた。沿岸に対馬(つしま)暖流が流れるため,多雪のわりには暖かく,暖地・暖流系の動植物が生息するし,冬季には北方からの冷水塊が寒地・寒流系の動植物をもたらす。漁業はサケ・マス・タラとともにイワシ・カツオ・マグロ・カニ・イカなどがとれる。農業は長い間米作単作を続け,かつては農間余剰労働力による出稼地帯として著名。杜氏に代表される酒造出稼は富山を除く各地で盛んであり,富山は家庭配置薬という独特の商業を営んだ。第2次大戦後,農業の機械化が進展するに伴って,兼業率が高まり,域内の第2次・第3次産業への就業も高まっている。工業は江戸期の伝統をもつ線維産業が行われ,福井・石川は絹・人絹から化合線織物の産地となり,富山は戦前綿織物が盛んであった。重化学工業は,富山県は水力発電による安価で豊富な電力,農村の余剰労働力を利用して,合金鉄・機械・化学・パルプなどの大工場が鉄道鉛線や海港の背後に林立している。今日の大陸貿易を根幹とした日本海時代の出現に期待が寄せられ,北陸自動車道の完成や北陸新幹線の敷設を望む声が高い。ただ交通網の充実に伴い,北陸の諸地方を個別に太平洋側と結びつける結果,北陸,さらには日本海地域の一体化を阻害されつつある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7084361