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奥能登
【おくのと】


県の最北端の地区,能登半島の北部を占める。旧の鳳至(ふげし)・珠洲(すず)両郡。現在の輪島市・珠洲市と鳳至郡の門前町・穴水町・能都(のと)町・柳田村,珠洲郡の内浦(うちうら)町の2市4町1村を含み面積は1,134km(^2)(県全体の27.0%),人口は12万人(県全体の10.8%)を占めるが,人口減少が激しく県内最大の過疎地域となっている。大部分が丘陵からなっており,その中に宝立(ほうりゆう)山(標高469m),奥能登の最高峰高洲(こうのす)山(標高567m)などが残丘状にそびえる。小河川が多く,平地はその河口に分散する。また冬季の北西季節風をまともに受ける日本海側を外浦(そとうら),沈降海岸の多い富山湾側を内浦と呼び分けることも多い。奥能登広域圏を作るが,古くから陸上交通が不便であったことから,地域の中心地といえるようなものはなく,小都市が分散する。農家人口が全人口の半数以上を占め,小規模な農業や林業が生活の中心であったが,古くから杜氏や船員としての出稼ぎが盛んな地域であり,現在は建設業や製造業への出稼ぎが多い。農業は河川流域の小平地や地すべり地形を利用した水田耕作が中心で,兼業農家が多いが,丘陵地では国営パイロット事業としてのクリ栽培,内浦町では施設園芸なども見られる。林業と水産業は県内で最も盛んに行われる。林業はかつては木炭の生産が多かったが,現在ではスギや県木のアテを中心とした民有林が県下で最も広い。水産業は輪島・小木(おぎ)(内浦町)・姫(ひめ)(能都町)・宇出津(うしつ)(能都町)・穴水などを中心とした大敷網や沿岸漁業が非常に盛んで,水産物は県都金沢や県外にも出荷される。特に小木港からは沿岸だけでなく,北洋漁業や遠洋イカ釣りにも出漁しており,県下唯一の水産高校も宇出津に設置されている。また輪島の海士(あま)町には海女が多く,夏季には舳倉(へぐら)島で漁をする。工業はあまり盛んとはいえないが,輪島には全国的に名を知られた輪島塗があり,そのほかの町にも,近年は農村労働力に立脚した繊維や電気機械などの企業が増加している。観光客は最近非常に多く訪れるようになった。雑誌などでよく紹介される輪島の朝市をはじめ,能登半島国定公園に含まれる外浦の海食崖や内浦の沈降海岸などの景勝地,古い建造物,「能登はやさしや土までも」といわれるような素朴な人情を求めてやってくる若者が,特に夏には多く,奥能登各地では民宿が多い。主な観光地としては,猿山(さるやま)・西保(にしほ)海岸・輪島・舳倉島・曽々木(そそぎ)海岸・仁江(にえ)海岸・時国家・木ノ浦(きのうら)海中公園・禄剛崎(ろつこうざき)・見附(みつけ)島・恋路(こいじ)海岸・九十九(つくも)湾海中公園・遠島山(とおしまやま)公園・由比ケ丘(ゆいがおか)などがあげられる。またさまざまな祭りも多く,魅力の一つとなっている。豪壮な祭りが多くの観光客を集めるが,そのほかにも民俗学的に重要なものも多い。アマメハギ(1月6日門前町皆月(みなづき)・輪島市大野)・ゾンベラ祭(2月6日門前町)・キリコ祭(あばれ祭り,7月8日能都町宇出津)・御陣乗太鼓(7月31日輪島市名舟(なぶね))・輪島の大祭り(8月23日~26日輪島市)・ニワカ祭(8月24日能都町鵜川(うかわ))・いびり祭(11月27日能都町鵜川)・アエノコト(12月~2月奥能登一帯)などが代表的なもの。かつては陸上交通はあまり発達せず,海上交通が盛んであったが,国鉄七尾線が昭和7年には穴水まで,同10年には輪島まで開通,能登線も同39年には全線開通した。道路は同38年に奥能登を一周する国道249号が完成し,現在は奥能登大規模農道や能登半島縦貫道も整備され,金沢まで約2時間で到達できるようになった。国鉄の路線は,単線でカーブも多く,スピードも出せないために自動車交通に押され,複線化などの大幅な整備が期待されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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