長浜浦
【ながはまのうら】

七尾湾南湾に面する海岸一帯の総称。七尾市矢田新・臼池(うすいけ)・大田より三室(みむろ)町のあたり。この地域は崎山半島が海岸近くまで迫っているので平坦地に乏しく大田・赤崎・此ノ木(このぎ)・上三室・下三室・福浦(ふくら)・福留(ふくどめ)の集落が海岸線に並んでいる。冬の北西季節風が強く，海岸線は竹で作った間垣が季節風を防ぎ，集落景観の特色を示す。「鹿島郡誌」に「口碑に大伴家持越中に国守たりし時長浜浦に別荘を構えし」と記し，「珠洲(すず)郡より発船(ふなだち)して治布に還りし時に長浜の湾弓に泊はてて，月光を仰ぎ見て作る歌一首　珠洲の海に朝びらきして漕ぎ来れば長浜の湾に月照りにけり」の万葉歌を引いている。また三室と大田との間，西に突出する岬角の南を「つと浦」と呼んだという（同前）。「類聚古集」では長浜湾に諸説があり，確定的でない。現在，府中埠頭より矢田新・大田に港湾施設が集中し，輸入材の北洋材・ラワン材の製材，加工工場が進出し，臨海部に73万km(^2)の岸壁，工業用地の造成が行われ，大田町まで埋め立てられて，以前の海岸線は見られなくなった。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7088723