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仁岸川
【にぎしがわ】


饒石川(万葉集巻17)・饒石河(能登志徴)とも書き,剣地川とも称した(鳳至郡誌)。鳳至(ふげし)郡門前町の南端を西流する川。2級河川。流長10.9km・流域面積47km(^2)。門前町野毛の雑木林に源を発し,桜滝・久川(くかわ)・馬渡(まわたり)・上馬場(かみばんば)を経て,剣地で日本海に注ぐ。久川で野口谷内川・桂谷川・枯古(かれご)川,馬渡で竹ケ谷内川・後谷川・窕(うつろ)川,滝町で白谷(しろたに)川・清沢(さいざわ)川,上馬場で北浦川,下馬場で馬場川を,それぞれ合流する。上流域にはスギ・アテ・ヒノキの造林が多く,中下流域は水田地帯で剣地地区の多くの村落を潤す。昭和34年・同51年に洪水を出したが改修工事が進み,現在久川までの護岸率は80%に及ぶ。剣地にはこの川を詠んだ大伴家持の歌にちなむ歌碑がある。天平20年春に,越中守大伴家持が出挙(すいこ)の督励のために能登半島を巡行した折の歌の題詞に,「鳳至郡の饒石川を渡りし時に作る歌一首」,短歌に「妹に逢はず久しくなりぬ饒石川清き瀬ごとに水占(みなうら)はへてな」と見える(万葉集巻17)。家持は,能登郡熊来(くまき)村(現鹿島郡中島町西部)から熊木川をさかのぼって,分水嶺を西に越え,富来(とぎ)川を下って羽咋(はくい)郡荒木(あらき)郷(現羽咋郡富来町の中心部)を経て,外浦(そとうら)の海岸線を北上し,鳳至郡に入り,八ケ川(はつかがわ)流域から東へ,鳳至(ふげし)郡の大屋(おや)郷(小屋郷)・大市(おおいち)駅(現輪島市の中心市街付近)に向かう途中で,饒石川の河口付近を渡ったと想定されている。なお,「仁岸川」の表記は中世以降に行われた(長家家譜)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7088839