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荒川
【あらかわ】


秩父山地西部に源流をもつ。笛吹川の支流。流長34km・流域面積182.3km(^2)。東山梨郡牧丘町・甲府市の境,秩父山地の西部の金峰山(2,595m)・朝日岳(2,581m)・国師ケ岳(2,592m)などに源をもち,黒雲母花崗岩の山岳地帯を南西に流下して黒平に出,野猿谷の峡谷を流下して板敷川を合わせ,川窪に出る。川窪付近は山間の小盆地をなしているので,その出口に荒川ダム(ロックフィルダム)を建設中。その下流約500mに仙峨滝がある。同所は当河川の河床遷移点に相当する。仙峨滝から下流は花崗岩峡谷の御岳昇仙峡である。昭和28年,毎日新聞の全国名勝地百選渓谷の部第1位に入選した美しい渓谷で,覚円峰・天狗岩・登竜岩など奇岩怪石が続き,春は白い花崗岩の岩壁と松の青さ,秋は白地に紅葉の美しい渓谷である。この谷を通る御岳新道は天保年間猪狩村長田円右衛門・勇右衛門が国中方面への近道として開いたものである。この昇仙峡を含めて以北の荒川流域はすべて秩父多摩国立公園に属している。長潭橋から下流は河岸段丘も発達し,平瀬には荒川を水源とする甲府市上水道の浄水場がある。その下流金石橋の上流で支流亀沢川が合流し,中巨摩(なかこま)郡敷島町牛句で甲府盆地に出て,南に広く扇状地を形成している。荒川はもと西を流れて釜無川と合流していたとの説もあるが,地形学的には疑問である。かつての「志麻庄」,今の敷島町敷島地区は当河川の形成した荒川扇状地上に発達している。当河川は敷島町から甲府市に南東流して行くが,古来,荒れ川で,「国志」に「荒ノ言ハ暴ナリ其ノ水暴流スルヨリ起リシ名ナルベシ」「武田ノ時大ニ防河ノ役ヲ興シテ横流ヲ治ム,荒河ノ一ノ出堤ハ信虎,信玄ノ築ク所ト云フ」「古ヘ此ノ辺ハ淵沼藪沢ノ地広クシテ凡テ飯田河原ト呼ビシナラン」とあり,広い河原場で付近はしばしば洪水の害に悩まされていた。信州往還荒川橋の上流で相川,下流で貢川を合流し,大きく屈曲して千秋橋辺から南流して,甲府市大津町で笛吹川と合流する。荻生徂徠の「峡中紀行」に「荒川ハ古ヘ忘河ト曰フ,壬生忠岑詠スル所ナリ」とあるが「荒忘ノ草体ノ似タルヲ以テ誤リナラン」とも,河道変遷して「涸レテ水ナク殆ンド忘レタルガ如ク,因リテ忘河ト名ヅク」とも記している。敷島町中下条松尾神社の社記に,当河川はもと大下条の西を流れたとあり,「国志」にも「巨摩山梨二郡ハ此ノ川ヲ分界トス」とある。最近国鉄中央本線竜王駅の北,敷島町大下条字金尾で金尾遺跡が発掘され,古代住居址や方形周溝墓が発見されて話題を呼んでいるが,これはおそらく旧荒川の自然堤防州の上にできた古代集落であろう。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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