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大武川?
【おおむかわ】


北巨摩(きたこま)郡白州(はくしゆう)町・武川村を東流する河川。釜無川の最長の支流。流長8.1km。北巨摩地方,武川筋には,多くの釜無川支流があるが,その中の尾白・大武・小武・濁・流・深沢の6河川は六河(むかわ)といわれ,武川の地名の起源となったといわれる。源を駒ケ岳頂上南面,水晶沢に発し,仙水峠直下で左折,地獄谷から流下する赤石沢や篠沢・桑木沢を入れ,右岸に,前栗沢・赤薙沢・二ノ沢・一ノ沢などの急流を入れて東進する。藪ノ湯付近で,平坦地に出て,広大な河原を形成,武川村柳沢北部で,鳳凰三山地蔵ケ岳から発する石空(いしうとろ)川の大きな支流を入れる。その付近から,中山(887m)の南麓を浸食しつつ武川村牧原に至って,釜無川に合流する。花崗岩地帯を流れるが,上流の一部では,堆積岩・変成岩地帯も通過して,各種の岩石を大量に流下させている。標高1,300mにヒョングリ滝があり,甌穴(おうけつ)に落ち込む急流が,「ヒョングリ返ル」ので名づけられ,尾白川の噴水滝とともに,その奇観を賞されたが,今は浸食が進み,また度重なる洪水のために,特色を失った。当河川の谷は,仙水峠を越えて戦国期以来,長野県伊那谷に至る最短路として,間諜や,修験者に使用されたといわれ,また,駒ケ岳登山道として利用されたが,昭和初年頃から荒廃して,今は,特殊な登山者以外は入らない道となった。支流,赤薙沢は,合流点近くに赤薙の大滝があり,この沢を遡行すると広河原峠に出て,野呂川広河原への最短コースとして,夜叉神峠の開通まで,多く使用されたが今は廃道となっている。鳳凰山から流下する石空川の谷は,宝永3年,荻生徂徠が踏査して,「峡中紀行」に詳しく記述しているが,餓鬼ノ瀑・餓鬼ノ嗌(のど)などが現在のどの地点か明確でない。標高1,400mに名瀑北精進ケ滝がかかる。たびたび洪水を起こし,多量の土石を釜無川に押し流すので,釜無川氾濫の原因となることが多い。特に昭和34年台風7号は流域各地に大被害を与え,牧原の北半が流失するという災害があった。昭和57年8月の10号台風は人畜の被害は無かったが,昭和34年災害以上の規模で,当河川は大きく荒廃した。今,砂防工事がしきりに行われている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7096318