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弘法坂
【こうぼうざか】


北巨摩(きたこま)郡高根町長沢の窪長沢から清里の念場原に通じる急坂。八ケ岳山麓の高原である念場原の南端が,大門川と川俣川との合流点に向かって突き出した地域で,河川が浸食して急斜面がつくられ,かつての佐久往還(国道141号)が,長野県方面に通じている。坂路の北側に伏流水の湧出があり,弘法水と呼ばれ,「昔,弘法大師が念場原を通ったとき,三里の間水がないので,憐れんで杖で地面を突いたら清水が湧き出した」(甲州の伝説)という。坂名も弘法湧水の伝説にちなむ。昔はこの湧水を近郷諸村の人々が利用したという。江戸後期,甲府金手町の詫間平兵衛は,弘法水を汲んで水桶につめ,数十頭の馬に積んで甲府に運び,この水で醸造した味噌によって繁盛したと伝えられる。当坂は屈曲の多い急坂が続くため,通行者から街道の難所といわれ,特に冬期間の自動車交通は困難を極めたが,久保長沢と三軒屋を結ぶ国道141号バイパス工事の完成により交通事情は好転した。また,付近の大門川の谷間には現在,大門ダム建設工事が進む。地質は,八ケ岳火山による火山角礫岩と火山性砂礫層を主とし,泥流堆積物・スコリヤ層を挟む地層からなり,当坂を中心に発達するため弘法坂火山砕屑物と称される。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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