十谷峠
【じっこくとうげ】
巨摩(こま)山地主脈の倉尾山と御殿山の鞍部で南巨摩郡鰍沢(かじかざわ)町十谷と早川町新倉を結ぶ峠。標高1,490m。大柳川に沿う十谷は古い宿場集落で,ここから早川入の要地茂倉まで生活物資の交流が頻繁に行われた。第三紀の地層からなる峠は,十谷温泉の所で大柳川に架かる吊橋を渡り右岸の取付道から峠に出る。比高800mの峠道も生活道路で整備されているため通行が容易である。峠途中の十谷の大草里(おおぞうり)は廃村となった。峠には大木が茂るが,西には屹立する南アルプスの山脈が,東には大柳川や富士川流域の集落や御坂(みさか)山地にそびえる富士の秀峰を望むことができる。山腹には昭和30年頃まで行われた出作耕作小屋が残る。廃道同然の当峠越えも昭和34年の台風7・10号の時は,早川沿いの県道野呂川波高島停車場線が寸断されたため,救援物資運搬に利用された。現在茂倉十谷線の林道開発が峠直下まで進んでいる。
| KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7097176 |