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信州峠
【しんしゅうとうげ】


黒森峠・川上峠ともいう。秩父山地西部に位置する小川山とその西に続く横尾山との鞍部。標高1,464m。県北西部の北巨摩(きたこま)郡須玉町と長野県南佐久郡川上村との県境をなす。峠道は穂坂路と称し,古くから甲州と信州佐久地方を結ぶ主要道路として知られ,「国志」に「千塚ヨリ志磨庄,穂坂庄ヲ歴ル故ニ路名ト為ス」とあり,また,川上口ともいわれた。甲府から千塚(甲府)―竜地(りゆうじ)(双葉町)―穂坂町三ツ沢(韮崎(にらさき)市)―浅尾(明野村)―黒森(須玉町)を経て峠越しに信州の原(川上村)に通じる古道。中世の武田氏時代には甲府から最短距離で信州佐久方面に至る戦略上の交通路でもあった。峠南麓の要地である黒森には口留番所が置かれていた。「国志」に「黒森ト云フ処ニ国界番所アリ信州佐久郡河上御所平ヘ三里河上山峠アリ」と見え,この地方の武士小尾氏が警備していたと伝える。道筋も時代の変遷があり,近世以後の経路は韮崎,若神子(わかみこ)(須玉町)を経て八ケ岳山麓の念場原を北上して信州に至る佐久往還(佐久甲州街道)が発達したので,当峠の通行は次第に寂れた。当峠は秩父多摩国立公園区域の最西端にあたり,峠から展望される金峰(きんぷ)山・瑞牆(みずがき)山・八ケ岳連峰などの山岳景観に優れ,また,増富ラジウム温泉郷(須玉町)周辺のハイキングコースになっている。現在の峠道は県道原浅尾韮崎線で,この道の前身は,昭和37年に完成した黒森から川上村原に至る甲信林道である。峠に甲信林道開通記念碑がたつ。釜瀬川沿いにある須玉町小尾の黒森には増富民宿村があり,付近には黒森鉱泉がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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